beautiful world

ぼくはまた君に恋するんだろう

「夕暮れに、手をつなぐ」第1話感想〜シンデレラガール〜

 

誰もがみんな嘆いてる

恋の魔法には期限がある

時が経てば宝石もガラス玉さ

もしもそんな日が来たって

キミは朝の光にかざして

それを耳元に飾るんだろう

ボクはまたキミに恋するんだろう

『シンデレラガール』

作詞作曲:河田総一郎

King & Princeの2018年発表のデビュー曲。デビュー曲なのに、魔法が解けた後にも言及するのって誠実で美しいなと思った覚えがある。いろいろな解釈ができるだろうけど、ひとつには「恋が醒めても残る真実の愛」かもしれない。

 

 

「夕暮れに、手をつなぐ」第1話

「出会い。青春を思うとき、なぜ人は切なくなるのだろう」

演出:金井紘  脚本:北川悦吏子

 

最初に謝っておきます。私、北川先生とは合わないなとずっと思ってましたが、食わず嫌いならぬ見ず嫌いでした。(朝ドラの漫画家編は好きでした)

 

 

とてもとても繊細な優しさに包まれたドラマでした。

 

 

番宣で猪と言われていた空豆は洞察力も気遣いもあるし、クールと言われていた音は優しさの固まりだし。

 

方言を使っていない音に「良い旅を」と笑いかけ、噴水でずぶ濡れになっても「すぐ乾くから」と笑い飛ばす。(自分で買い直すところで平気じゃなかったんだなと分かる)音には帰ると言って帰らなかったり。音を翔太のマンションに連れて行ったのも、翔太に気を遣わせないためだったのかもしれない。実際、浮気には怒ってないし。

 

音も噴水から咄嗟に携帯(大事な夢が詰まったもの)を守るけど、すぐに「服買おう」って言ってあげるし、自殺しようとしてるのかもしれないとハサミやカミソリを隠そうとするし(そこに気がつく空豆も賢い)。

 

小さい頃に空豆を庇った翔太も優しい人なんだろうな。空豆の実家のおばあちゃんのためにエレベーター付けてあげるし。新彼女には空豆のことを相談してたんだろうし。もしかしたら本当に結婚するつもりだったのに、レストランに「大東京」トレーナーを着てくる空豆の社会性の無さにもうダメだと思ってしまったのかもしれない。その前に言い出せないのは間違えた優しさだけど。(彼女さんが謝ってたのはそういうこと?指輪もマグカップも早すぎるけど)

 

空豆は翔太に守ってもらうことで学生生活を楽しめた。空豆にとっては文字通りシンデレラの王子様だったんだろうな。でも、それは小さな世界で、翔太は先に大きな世界を知って。魔法が解けてしまって。

 

冒頭の2022年も履いていた黒のローファー、もしかしたら学生時代から履いてたものかも。(高校生のバイトで買えるという意味の安物)指輪とローファーを失い、ビタミンカラーのスニーカーを手に入れた空豆は自分の足で歩き始めるんだろう。もう二度と脱げない靴で。

 

 

翔太に止めてもらった「ロミオとジュリエット」のようにバルコニーからお互いの名前を聞く空豆と音。素直に「良い名前」と言ってくれて、音の作る曲にも「ええ曲じゃあ」と感動してくれる空豆に音は救われたんじゃないかな。※1

 

「心が無い」と言われ、自分に自信も無くし、もう会わない人に対する親切心で咄嗟に「マンボウ」と優しい嘘を吐く音。

 

おとぎ話の「幸せにしてほしい」「幸せにしてあげる」依存関係じゃなくて、お互いに背中を押して並んで歩けるような関係になると良いなと思う。※2

 

番宣や事前インタビューで持ってた印象と全然違ったから、やっぱり自分の目で見てみないと分からないな、ドラマって。そこが面白いところなんだけどね。

 

 

 

 

※1「どんぐりころころ」はいわゆるヨナ抜き音階でできているので郷愁を誘うメロディーなんだよ。だから泣くのは全然不思議じゃない。有名なのは「カイト/嵐」とか「夜に駆ける/YOASOBI」「春泥棒/ヨルシカ」。

 

※2  シンデレラの靴とか、アリエルとか、偶然に次ぐ偶然とか、おとぎ話でフィクションなんだよって言ってくれている気がする。だったら、そういうものだと純粋な気持ちで楽しみたいな。