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ぼくはまた君に恋するんだろう

「オートリバース」感想~「そして僕は途方に暮れる」

原作未読だし、物語の設定が古すぎて分かるかなと思ってたけど、杞憂だった。

思春期の煌き、切なさがぎゅっと詰まっていた濃い時間だった。

 

君の選んだ ことだから

きっと大丈夫さ

君が心に決めたことだから

そして僕は途方にくれる

ヒメが好きだと言っていた曲。

大澤誉志幸の『そして僕は途方に暮れる』。

ヒメは続けて直に言う。

好きですって何も考えずに叫べる相手がいるってすごくいいことじゃない?でもみんな自分のためにそれをしているでしょ?アイドルって勝手に尽くされて大変な仕事だよね。

 

最初は純粋にアイドルを応援したいと思っただけだろうに、高階にとっては恐らく初めての「努力の報われる世界」であって、高校も辞めてしまうほどの「自分の居場所」。直も親衛隊を辞めさせられ、高階も病気で親衛隊にいられなくなり、居場所を失うで、二人は「小泉今日子」に「会いたい」と願う。

 

アイドルって自分が好きで応援してるだけなのに、いつの間にか目的が変わってしまったりするのは今でもよくあることなんじゃないのかな。若いと余計に突っ走ってしまったり。それでも誰かを好きな気持ちには変わりないし、「好きだ」と言えることは幸せだよね。

 

なんといっても、猪狩くんの「直」、作間くんの「高階」の演技が凄かった。原作、脚本の高崎先生が「演技の上手い人は読解力が高い」との言葉に納得する。イメージ的には、やんちゃなガリさんが「高階」で、大人しい作ちゃんが「直」っぽいんだけど、武闘派になっていく「高階」のどこか冷めた怖さは作間くんならではだったんじゃないのかな。

ヒメの美山加恋ちゃんは子役出身だけあって上手かったし、小泉今日子を演じて歌まで披露する恒松祐里さんも可愛かった。ちょい役のツダカンさんにはびっくりしたし、黒木華さんのタイトルコールは豪華すぎる。

 

会いたい 会いたい 痛い この胸に空いた穴

会いたい 会いたい 痛い この傷がくれた夢

主題歌HiHiJetsの『ドラゴンフライ』の歌詞が回を追うことに毎回違って聞こえるのも良かった。

希望だったり、絶望だったり、怒りだったり、諦めだったり、俯瞰だったり、ひたむきだったり、優しく寄り添う歌だったり。

 

「完全版」を聴かないと意味が分からないところもあったり、親衛隊=暴走族がよく分からなかったり、全部が全部肯定的に捉える訳じゃないけど、それでも2020年の年末に素敵な作品に出会えて良かったと思う。