beautiful world

ぼくはまた君に恋するんだろう

King & Prince「TraceTrace」考察

 

話したいことがあったんだった

僕らがいるこの今日に 何を思っていただろう

ただ描きたい絵があったんだった

誰かをなぞる筆で何を描けただろうか

 

覚める いつか

Cannot be somebody

So I just undertake

 

言える想いの全てが嘘だって言うならさ

ただぶつかって伝えようぜ

君の歩幅で歩けるならさ 嘘だっていいから

 

Give me another name

Then I just undertake

 

いつか思い出して ここにいたことを

一切を込めてなぞっていくだけ

未来忘れて分からなくなったんだ

はみ出して 交わって 重なって

描いたはず 今日のストーリー

 

僕は今ここ 足跡のない場所

ここにある歴史刻み込むように

また今を思い描いて 自由に

僕ら今ここ 足音残して行こう

君の絵に愛を せめて今だけ

 

 

話したいことがあったんだった

過去を辿った今で 何が未来にあるだろう

分からないことがあったんだった

何かをなぞる筆でこの今日をなぞれるだろうか

 

覚める いつか

Cannot be somebody

So I just undertake

 

見える望みの全てが嘘だって言うならさ

またこうやって伝えようぜ

君の言葉で語れるならさ(教えて) 嘘だっていいから

 

Give me another name

Then I just undertake

 

いつか忘れてもいい ここにいないことを

君が一人でも歩けるだけ

未来思い出して今分かったんだ

僕がいた 君がいた ここにいた

ただそれだけさ

 

ただそれだけだった

それだけでよかったな

描いたのは今日のストーリー

 

ここが君と僕の境界

どうやっても君が知ることのない将来

残らない軌跡の果てで ペン先突いて高く鳴らそうな

朝に触れた手に重ねて

なぐり描きした白昼夢

全て焼く夕景

夜を越えてまた明日で会おう

 

いつか思い出して ここにいたことを

一切を込めてなぞっていくだけ

未来忘れて分からなくなったんだ

はみ出して 交わって 重なって

描いたはず 今日のストーリー

 

僕は今ここ 足跡のない場所

ここにある歴史刻み込むように

また今を思い描いて 自由に

僕ら今ここ 足音残して行こう

君の絵に愛を せめて今だけ

 

話したいことがあったんだった

僕らがいるこの今日に 何を思っていただろう

 

「TraceTrace」

歌:King & Prince

作詞:伊根 作曲:伊根

(新・信長公記~クラスメイトは戦国武将~ 主題歌)

2022年9月14日発売King & Prince 10枚目のシングル「TraceTrace」は不思議な世界観の曲。とらえどころのない歌詞には少なくとも三つの意味がある。

 

 

①「アンドロイドと人間」

作詞作曲の伊根さんはAdoなどにも曲を提供しているボカロP。ボカロではよくあるテーマらしい。永遠の生を生きるアンドロイドと有限の生命しかない人間。

MVの世界観もこれに通じるような。

 

アンドロイドは感情を持たない。感情に見えるのはプログラムであり、例えば恋なんてものはバグでしかない。それでも「君」「始まって交わって重なって」感情が芽生え、人として個性が出る服だったり世界が色づいて見える。

ただ、それでも「君」「僕」の間には時間の流れ方も違う。未来のストーリーを知っているアンドロイドだからこその悲しみを「僕と君の境界」と一線を引く。冷たいようで、それは「僕」の優しさでもある。時計も半分壊れ、人間がいなくなったボタニカルな世界で「君」の想い出を「ペン先ついて高く鳴らそうな」というアンドロイド。ペン先から飛び出したインクは単色かカラフルな色か。

 

もうひとつの可能性はアンドロイドがリユースされていること。リセットされて記憶を失ったはずが、「君」と出会うことが、残っているはずのない記憶を掘り起こす。だが、先のプログラムまでは分からない。過去も未来もなく、ただ今日の日を一緒にいたい。できれば「夜を超えてまた明日で会おう」

 

 

②「アイドル King & Prince」

アイドルは永遠ではない。SMAPや嵐の活動休止などで実感した人も多かったはず。MVの中で彼らは年を取らないし、映像もインタビューも歌も永遠に残り続ける。※1 

記念すべき10枚目のシングルということで、MVにも過去の作品をトレースしているのがうかがえる。

 

「誰かをなぞる筆で 何を描けただろうか」自分たちのオリジナルを出そうともがくけれど、それは先輩方の描いてくれた道かもしれない。それでも「描きたい絵」を描くしかない。他の誰も描けないのだから。

 

いろいろな噂や憶測が飛び交う世界で「見える世界の全てが嘘だって言うなら」「ただぶつかって伝えようぜ」と言ってくれるアイドル、King & Prince。

 

「どうやっても君が知ることのない将来」

ドラマも映画もバラエティーもMVも、基本的にはファンが見るのは彼らの「過去」でしかない。そこに至るには無限の努力があるのに。彼らは常に「未来」を生きている。

 

ファンもライフステージが変わったり、他に目映りしたりする。それは仕方ない。

いつか永瀬廉くんがそんなことを言っていたことを思い出す。

「いつか忘れてもいい ここにいないことを 君が一人でも歩けるだけ」

「僕がいた 君がいた ここにいた ただそれだけさ」

 

 

心配しなくても良いよ。

唯一無二のアイドルだよ。

 

 

③「クローンとしての運命」

「TraceTrace」は「新・信長公記」の主題歌。8話終了時点で家康(信長も知ってる?)以外の武将は自分が戦国武将のクローンであることを知らない。衝撃の事実を知ったとき、彼らはどうするのか。

 

「話したいことがあったんだった」

クローン武将は全員15歳。思春期真っ只中。クローンでなくても自分のアイデンティティーも模索する日々だろう。あまりにもつらい現実。

 

「Cannot be somebody So I just undertake(他の誰かになれないだろうか。それなら引き受けるだけ)

「Give me another name Then I just undertake(俺に他の名前をくれ。そしたら引き受けるよ)

何度も繰り返される英語詞。「織田信長」で無かったら、普通の15歳だったら、そっちを選びたい。誰かのコピーではない人生を送りたい。自分の道は自分で決めたい。そう思うのはごく自然なことだろう。

 

「君の言葉で語れるなら(教えて) 嘘だって良いから」

歴史は勝者に都合よく語られることが多い。それでも良い。信じるだけだから。信長らしい言葉。

 

④「未来忘れて 分からなくなったんだ」

アンドロイドでもアイドルでもクローンでも、この曲で共通する点がひとつある。それは、「未来」がわからない、という点だ。

歩くべき道が分からなくて途方にくれる「僕」※2 だけど、逆に言えば、「また、今を思い描いて、自由に」と、自分自身で考えて前に進むことができるということ。今までの足跡は見えなくなってしまっても、これから先の足跡は付けることができる。

 

タワレコの記念レシートには「現在(いま)を積み重ねて 精一杯生きていこう 20180523→→→」というメンバーの言葉が載っている。

 

デビューから4年、10作目の記念すべきシングルとして最高だよ。

 

https://youtu.be/YMErhJXZhp0

 

 

※1)いつまでも残るものだから若い時にしか着れない衣装を着たほうが良いと個人的には思うよ。

※2)ジャニーさんの手の平の上で踊らされてた頃はある意味、楽だったのかもね。