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ぼくはまた君に恋するんだろう

舞台「エレファント・マン」感想

小瀧望くんの杉村春子賞受賞のお祝いの「エレファント・マン」のアンコール配信。

昔、デヴィッド・リンチ監督の映画版を観てトラウマになるくらい辛かったから、軽い気持ちで観るものじゃないと敬遠してたのだけど、観て良かった。

 

・冒頭、フレデリック先生の説明に合わせて身体を曲げる小瀧くん、凄い。ダンスやってる人は自分の身体を知ってるから動けるのかも。呼吸音も口を開け続けているのも腰をひねった姿勢を続けるのも凄い。

・三人どんぐりさんたちに「幸せ」について話すメリック。これだけでメリックは聡明なこと、繊細なこと、充分な教育を受けていないことが分かるね。

・途中で歌詞を忘れて泣いちゃうどんぐりさんたちに「歌上手だったね」「泣かないで」と言い続けるメリック優しい。病院で最初の看護婦さんが逃げた時も「ごはん大丈夫だったね」って。

・親方に見捨てられた時に「とおさん~」って叫んでる?親方は動物を扱うみたいに「メリックの言葉」を聞こうともしないのに。お金もきちんと数えてたんだね。

・「研究対象」というより「保護者」として接するフレデリック。「紳士」だし、「良い人」なんだよね。

・「ロミオとジュリエット」の話、鋭い。やっぱり賢いんだよね。模型の話も。器用だし。でも、病院の外では生きていけない。才能を発揮できる場所もない。

・病室は清潔で明るいけど、牢屋のようでもあり、動物園のようでもあるんだなあ。

・ボロ布→病院衣→正装と「普通」に近づいていくメリック。

・「単に美しく生まれただけ」なケンダル夫人。メリックと表裏なんだね。裸を見せたのは同情か愛情か入り交じっているのか。

・「愛」について話をするフレデリックとメリック。女性の患者のことだけじゃなくて、メリック本人のことも表してるのかな。メリックは「愛情」が欲しかったのかもしれない。

・ラストシーンは「長生きしている」との理事長とフレデリックの会話内容を感じたメリックが積極的ではなく「まぐれ当たり」に自殺したってこと?クリスチャンだと自殺は天国には行けないけど。「メリックさん」と慕ってくれる下働きの人もいて幸せだったのかもね。「普通」になりたかったんだよね。

※(追記)「まぐれ当たり」が何なんだろうって考えてたんだけど、敬虔なクリスチャンなメリックが自殺するとは考えにくいから、(故意か無意識かグレーゾーンだけど)事故だったんだろう。

・そんな彼も「エレファントマンが死んでる!」と。物語の中のジュリエットと同じく、脈も取らずに。

 

切ない、つらい物語だけど、美しい物語だったなあ。「普通」ってなんだろう。「優しさ」ってなんだろう。そんなことを思わせてくれる物語だった。