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ぼくはまた君に恋するんだろう

「おかえりモネ」第19週感想〜菅波光太郎の場合〜

君とのラブストーリー
それは予想通り
いざ始まればひとり芝居だ
ずっとそばにいたって
結局ただの観客だ

感情のないアイムソーリー
それはいつも通り
慣れてしまえば悪くはないけど
君とのロマンスは人生柄
続きはしないことを知った

もっと違う設定で もっと違う関係で
出会える世界線 選べたらよかった
もっと違う性格で もっと違う価値観で
愛を伝えられたらいいな そう願っても無駄だから

グッバイ
君の運命のヒトは僕じゃない
辛いけど否めない でも離れ難いのさ
その髪に触れただけで 痛いや いやでも
甘いな いやいや
グッバイ
それじゃ僕にとって君は何?
答えは分からない 分かりたくもないのさ
たったひとつ確かなことがあるとするのならば
「君は綺麗だ」

誰かが偉そうに
語る恋愛の論理
何ひとつとしてピンとこなくて
飛行機の窓から見下ろした
知らない街の夜景みたいだ

もっと違う設定で もっと違う関係で
出会える世界線 選べたらよかった
いたって純な心で 叶った恋を抱きしめて
「好きだ」とか無責任に言えたらいいな
そう願っても虚しいのさ

グッバイ
繋いだ手の向こうにエンドライン
引き伸ばすたびに 疼きだす未来には
君はいない その事実に Cry...
そりゃ苦しいよな

グッバイ
君の運命のヒトは僕じゃない
辛いけど否めない でも離れ難いのさ
その髪に触れただけで 痛いや いやでも 甘いな いやいや
グッバイ
それじゃ僕にとって君は何?
答えは分からない 分かりたくもないのさ
たったひとつ確かなことがあるとするのならば
「君は綺麗だ」

それもこれもロマンスの定めなら 悪くないよな
永遠も約束もないけれど
「とても綺麗だ」

 

「Pretender」

歌 : Official髭男dism

作詞 : 藤原聡

作曲 : 藤原聡

「Pretender」はOfficial髭男dismの2019年のシングル。詐欺師を描いたドラマ「コンフィデンスマンJP」の主題歌でもある。明るい曲調なのに哀しい歌詞。

ちなみに、「コンフィデンスマンJP」は毎回「目に見えるものだけがすべてではない」といったナレーションで始まる。

 

詐欺といえば、おかえりモネの安達奈緒子先生も「サギデカ」というオリジナル作品を書かれています。

 

「おかえりモネ」第19週「島へ」

 

「百音さんへ」

君との出合いは山だったね。君が抱えた山盛りの野菜が転がってきたのを僕が拾ってあげた。そう、僕はいつも君が抱えきれない荷物を拾い上げてきたんだ。

 

気仙沼からのバスの中で「(彼は)幼なじみです」。君はそう言ったね。自分用のサメのぬいぐるみを見られて恥ずかしくて、咄嗟に「東京の同僚にあげる」とついた嘘。僕は君の抱えた牡蠣の箱を持つのも気がつかなかったけど、君に勉強を教えることはできた。「先生、すごいです!」目を輝かせる君を僕は微笑ましく思っていたよ

ふと気になって気仙沼の台風を調べたら、今日が誕生日だと分かったから教科書をプレゼントした。「先生に貰う訳には」遠慮する君はきちんと躾のいきとどいたお嬢さんなんだなと思った。

クリスマスには縄跳びを渡したね。その甲斐あって気象予報士試験に合格したときは、僕も心から嬉しかったよ。

 

君が上京すると聞いたとき、まさか会えないだろうと思ってた。だってそんなの1300万分の2の確率だから。

だから、僕の病院の近くのコインランドリーで君を見つけたとき、運命の人なんじゃないかと心をよぎった。そんなの非科学的だけど。それにしても、こんな近くにいたなんて。それなのに、会っていなかったなんて。おかしい。

 

それからコインランドリーで会うたびに、君は僕に相談してくれたね。君への気持ちがLIKEではなくてLOVEだと気づいたのはいつだったろう。登米では冷やかされても気にしてなかったのに。都会に出た君は見違えるくらい綺麗になっていったね。

 

少しずつ距離を縮める僕たち。君から会いたいと聞いたときは嬉しかったなあ。

ドキドキして予定の時間より早く着いたら、君ではなく、バス停で見た幼なじみの彼に会ってしまった。金髪でなくなった彼は少し大人に見えて。

「モネー!来たよー!」と臆せず君に大きな声をかける彼。紹介すら断るなんて、やっぱり子どもっぽいな。病院から呼び出しがかかってしまったので、デートは翌日に仕切り直しになってしまった。

 

翌日汐見湯に行ったら、君はいなかった。彼の元へ行った、君の妹さんが言った。

「あの二人は昔から通じ合ってる」

そんなこと、ずっと前から知っていた気がする。あの日、車内からバス停で見た君の表情。バスの中から笑顔で彼に手を振って。でもバスが出発すると振り返らずに本を読みはじめて。

君の親友に説明されても、一度ついた傷は消えない。言葉はかさぶたのように傷を覆うだけで。

 

動揺。「忘れていました」と君に電話を貰ったときも「そういう人のほうが信用できます」とは言ったけれど、その言葉に嘘はないけれども、この感情はなんだ。嫉妬ではない。彼女の大事な友達なんだから。そもそも交際してる訳でもないのに。

 

後日、再会したとき、君は僕の手を取って言ったね。「私も言われたんです。正しいけど冷たいって」「彼は縋ったんだと思います。でも私は応えることができなくて」

なんて酷い男だ!振られたからってそんな冷たい言葉を投げかけるなんて。

僕は君を抱きしめた。

 

合鍵を渡したのに忙しくて、すれ違う僕たち。君が投げた合鍵を僕は受け止めることができた。これからは何でも受け止めたい。受け止められる、そう感じた。

 

僕は、君に僕だけの呼び方をしたい。だから「百音さん」と呼ぶことにした。幼なじみと一緒の呼び方なんて嫌だ。

 

月日が流れて、僕は東京に戻ることになった。だけど、君は地元への想いが強くて。気仙沼に帰りたい、その気持ちは痛いほど伝わってきたよ。

誕生日の一日前のプロポーズ。コインランドリー※1)でするべきではないと思っていたけど、つい感情の赴くままに喋ってしまった。君はまだ若いから返事はすぐにとは言わない。

 

気仙沼の竜巻を見に行くように背中を押したのは僕だ。誕生日プレゼントとして、サプライズでホルンの演奏してもらったよ。君は恍惚として聞き入ってたね。

「一緒にいるってどういうことでしょう」

「一緒に二人の未来を考えるってことじゃないですか?」

君は首を横に振った。※2)

 

そして、君は気仙沼に帰っていったね。

僕は、君からの唯一のプレゼントのずんだ餅を握りしめて、今日も君からの電話を待っているよ。

             菅波光太郎

 

 

ーーー菅波先生、良い人だなあ。

 

ところでホルンの宮田さんが吹いていたのはアイルランド民謡「ダニーボーイ」

http://www.worldfolksong.com/sp/songbook/ireland/danny-boy.html

いろいろな解釈があるけど、出征する愛する息子に送る歌、が一般的。たとえ死んだとしても息子の帰りを待つ親心。(美波さん?)

 

こちらは「ダニーボーイ」を原曲とした「You Raise Me Up」荒川静香さんのエキシビション曲として有名。

http://www.worldfolksong.com/sp/songbook/ireland/you-raise-me-up.html

「あなたが私を高めてくれる」「嵐の海でも歩いていける」の歌詞が印象的。

 

以下、超個人的な感想。

※1)コインランドリーでも良い、むしろ二人が奇跡的に再会した大事な場所だからコインランドリーって言ってほしかった。

※2)超超勝手な解釈だけど、私は「菅波先生」=「インターネットの化身」だと思っている。何でも知ってて、いつでも答えを教えてくれる存在。嘘も真実も玉石混交。菅波先生の本棚のように。冷静に考えて、中学生レベルだったモネが縄跳び飛んだからといって、合格率5%の試験には通るはずがない。だから「僕を信じるなんてバカです」になるのかと。ガンがショックで怪しげな療法に手を出すのはよくあることだし。

首を振ったモネはネットに頼らず、自分の頭で考えることを選んだのかなと。