beautiful world

ぼくはまた君に恋するんだろう

「おかえりモネ」第20週感想〜永浦百音の場合〜

もうきっと多分大丈夫 どこが痛いか分かったからね
自分で涙拾えたら いつか魔法に変えられる

ほんの少し忘れていたね とても長かった ほんの少し
お日様がない時は クレヨンで世界に創り出したでしょう

正義の味方には見つけて貰えなかった類
探しに行かなくちゃ 呼び合い続けた あの声だよ

溜め息にもなれなかった 名前さえ持たない思いが
心の一番奥の方 爪を立てて 堪えていたんだ
触れて確かめられたら 形と音が分かるよ
伝えたい言葉はいつだって そうやって見つけてきた

振り返れば途切れずに 歪な線を描く足跡
悲しいくらい分かりやすく いつもここに向けて伸びる

大切にするのは下手でも 大切だって事は分かっている
せめてその白い手紙が 正しく届きますように

考え過ぎじゃないよ そういう闇の中にいて
勇気の眼差しで 次の足場を探しているだけ

解き放て あなたの声で 光る羽根与えた思いを
その足が向かうべき先へ そうしなきゃ見えなかった未来へ
諦めなかった事を 誰よりも知っているのは
羽ばたいた言葉のひとつひとつ 必ず届きますように

もう一度 もう一度 クレヨンで 好きなように
もう一度 さあどうぞ 好きな色で 透明に
もう一度 もう一度 クレヨンで この世界に
今こそ さあどうぞ 魔法に変えられる

ああ、なぜ、どうして、と繰り返して それでも続けてきただろう
心の一番奥の方 涙は炎 向き合う時が来た
触れて確かめられたら 形と音をくれるよ
あなたの言葉がいつだって あなたを探してきた

そうやって見つけてきた

 

「Aurora」

歌 : BUMP OF CHICKEN

作詞:藤原基央

作曲:藤原基央

「Aurora」は2019年のBUMP OF CHIKENの作品。頑張れとは言わないエールソング。

(気嵐ツアーのプレゼンの時にオーロラの話が出たきっかけで選びました💦歌詞がすごく良いので)

 

「おかえりモネ」第20週「気象予報士に何ができる?」

 

波の音で目が覚めた。ここは幼い頃から過ごしてきた故郷。潮の香りが心地よい。

 

幼い頃の最初の記憶はなんだったっけ。

生まれたばかりの妹が私の歌で泣き止んだ。お父さんもお母さんも喜んでくれた。

(ーーーあの頃は私にも役に立てることがあった。音楽。)

少し大きくなった妹と葉っぱを川に流したのはいつだったろう。おじいちゃんもサヤカさんもいた気がする。

「山も川も海も繋がっている」

おじいちゃんが教えてくれたのを妹は覚えているかな。

 

小さい頃、お父さんが付いてきてくれたサックスのレッスン。中学校で立ち上げた吹奏楽部。勉強はあまり出来なかったけど、部活も運動会も楽しかったなあ。いつも幼なじみが一緒で。りょーちんもりょーちんのお父さんお母さんも笑ってて。

 

あの日までは。

 

高校の音楽科合格発表の前日「明日の練習は?来れんの?」と聞いてくれたりょーちん。約束を守れなかったね。ごめんね。

あの日、お父さんの車で早く帰れていたら、りょーちんのお母さんも救えたのかな。おばあちゃんもみーちゃんひとりに任せなくてもよくて。

「音楽」は様々なことを思い出してしまう。

みーちゃんを励まそうと「元に戻るよ」と言ったら、「お姉ちゃんは津波を見てないもんね」と言われた。

(ーーー私には何もできなかった)

 

気象予報士は未来が分かる。災害時にはリードタイムが取れる。あの日には帰れなくても、これから先、大切な人を失うのを防ぐことができるかもしれない。

 

最後の試験の少し前の正月。りょーちんとりょーちんのお父さんの痛みを知った。気象予報士に受かりたい、心からそう思った。

 

人の役に立ちたい。その一心で気象予報士になった。でも、「人」って誰?「それって結局自分のため」って神野さんには言われたけど、そうなのかな。

 

車椅子ランナーの鮫島さんのサポートをしているときに菅波先生が過去の過ちを私に告白してくれた。嬉しかった。私を信じてくれて、頼ってくれたようで。背中をさすることしかできないけど。

 

冷たい風が吹いてきた。雨が降るかもしれない。橋の上で菅波先生の最初の授業を思い出したときに、りょーちんが現れた。

幼なじみみんなで楽しくお酒を飲んで早朝帰ったりょーちん。でも帰っていなかった。深夜の電話に出てくれたりょーちん。

「おれ、全部辞めていいかな」

「ごめん、おれ、やっぱモネしか言える相手いない」

(ーーー私に何かできるかもしれない)

 

深夜バスで気仙沼に帰ろうとしていることがわかって迎えに行った。昔ながらのレトロな喫茶店にいると子どもの頃みたいだ。

「周りの期待に応えるって楽なんだよね、最初はね。でもだんだんしんどくなる」「もういいや」

震災のすぐ後、登米に帰るバス停、今回で三度目。りょーちんは本音を隠しては心の壁の向こうにすっと引っ込んでしまう。大丈夫と微笑んで。

(ーーー私には何もできないのかも)

 

気仙沼に帰ろうとするのを引き止めて汐の湯に戻る。三生も悠人も仙台から駆けつけてくれた。りょーちんが気仙沼で漁師として頑張っていることを熱弁するみーちゃん。りょーちんの手を取り涙ながらに温かい言葉をかける三生。りょーちんの心も解きほぐされたかのようでホッとする。

(ーーー私じゃなくても良かった。私じゃないほうが良い)

 

「分かってんでしょ」

「……これで救われる?」

(ーーーこんな私があなたを救えると思っているの?りょーちんを救うのは私じゃないよ。みーちゃんか三生だよ。りょーちん、間違えているよ。私は津波を見ていない。あなたの痛みを私は知らない。私は東京の仕事を捨てられない。私にはあなたに向き合う資格が無い)

 

りょーちんは、また「大丈夫」と微笑んで気仙沼に帰っていった。

みーちゃんからのLINE。無事に帰れて良かった。みーちゃんがそばにいれば、きっとりょーちんは大丈夫。

そして、私は菅波先生にすがった。

 

登米のみんなもすーちゃんも会社の同僚もみんな喜んでくれる。そして、なにより菅波先生は良い人。私の何もかもを包みこんで受け止めてくれる。これが恋なのかも。

 

先生にプロポーズされたとき、亀島を竜巻が襲った。実家に電話したら大丈夫と答えられた。

(ーーー大丈夫と言う人は大丈夫じゃない)

いてもたってもいられなくて故郷に戻った。あの頃と違って今は橋がある。そばにいたい、その一心だった。 

亀島のみんなは明るかった。りょーちんはみーちゃんと荷物を運んでいて。二人が仲良さそうでホッとした。みんなの力強さに気がつくと涙がこぼれていた。

(ーーーただそばにいるだけでいい。それが力になる)

 

ホルンの奏でる音。中学生の頃の吹奏楽を思い出す。先生、素敵な誕生日プレゼントありがとうございます。私は気仙沼に帰ります。

 

ラジオDJをやることになったとき、古いCDが目に止まった。みんなで庭で練習した「アメリカン・パトロール」。聴いていると記憶が蘇る。そうだ、あのとき、確かにりょーちんもいた。何故思い出せずにいたんだろう。

 

みーちゃんとりょーちんは良い雰囲気だと思っていたのに、三生と悠人は微妙だと言う。(ーーーえ?なんで?だから身を引いたのに?)

 

しばらく会わないうちに大人になったりょーちん。自分の船を買うと夢を語る瞳がまぶしい。

「ごめん。綺麗事にしか思えないわ」

「綺麗事だと思われても仕方ない」

「悪いけど、今はそう思ってる」

(ーーーこれは、りょーちんからのエールであり、挑戦状。モネは島の人からそう思われているんだよ。本気見せてみろよ、目を逸らすなよ。そう言われている気がした)

 

りょーちんはいつもこうやって背中を押してくれていたね。中学校で吹奏楽部を立ち上げた時もサポートしてくれて。でも、今は私には気象予報士という武器がある。自分の力で信用を勝ち取る。それしかない。

 

引いては返す波の音が聞こえる。

私はここにいる。

いまなら、魔法で涙も強さに変えられる。

 

 

モネ視点から見ると、物語がシンプルなのが分かる。脚本も破綻していない。

ひとりひとりのエピローグの気仙沼編、楽しみだよ。