草葉におく白露、
水に宿る月よりなおあやし。
金谷に花を詠じ、
榮花は先立って、
無常の風に誘わるる。
南楼の花をもてあそぶ輩も
月に先立って
有為の雲にかくれり。
人間五十年、
下天のうちをくらぶれば
夢幻の如くなり。
ひとたび生を享け、
滅せぬもののあるべきか。
織田信長が愛したとされる幸若舞「敦盛」。敦盛とは平家物語に出てくる平清盛の甥で笛の名手平敦盛のこと。その平敦盛を討った源氏の熊谷直実が出家する際の心情を綴ったもの。
「新・信長公記‐クラスメイトは戦国武将‐」
EPISODE1 新・戦国時代の幕開け
「狂った男の狂ったロマン」
この冒頭の言葉を聞いたとき、びっくりというより何故か懐しくさえ感じてしまった……
設定は違うけど、ひとりの男に振り回される物語があった。ジャニワ。
主演の永瀬廉くんが自身のラジオで「ジャニーズワールド」みたいと言った「新・信長公記」。ぶっ飛んだ設定とスピード感、濃厚なトンチキ感がまさにそう。
ただ、ジャニーズワールドと言えば、元々はひとりの少年が狂人的プロデューサーに導かれ、様々な世界や過去、未来を旅し、平和のありがたさや日本の素晴らしさを見つけていく物語。過去と未来が交錯したこの世界観にも合致するところもある。
私も歴史好きだから、名だたる戦国武将をひとつのところに集めたら、誰がどんなに強いんだろうと思う気持ちはわからなくもない。
ジャニーさんも同じようなことやってたよね。ジュニアだとファンがびっくりするような組み合わせを試してみたり。
紫耀くんが急遽東京の舞台に立つことになった夜に、大阪の自宅にいた廉くんを呼び寄せて。風呂にも入っていたのに三十分で新幹線に飛び乗った廉くん。入所したばかりの海ちゃんに「あの二人どう?」と聞いて「楽しかった!」との返事に三人にユニットを組ませたジャニーさん。100年にひとりの逸材平野紫耀と天才ダンサー髙橋海人と、努力の天才永瀬廉を組み合わせてMr.KINGってユニット名をつけて。どんな化学反応が出るのか楽しんでいたんだろうな。
「あの雲は何故生まれてきたのか」
総長戦にも興味ない信長。自分をアピールしたりもしない。他の武将たちとは違う。身体の中のDNAなのか、敦盛を聴くと踊り出す信長。戦っているときの表情がどこか切ないのも見ていて胸が痛くなる。自分がクローンと知ったとき、どんな表情を見せるんだろう。
「父親との約束、意地でも果たせ。意外とイージーかもしれない」
信長のダジャレなんだけど、廉くんっぽいセリフ。負けず嫌いなところと、グダグダ悩んでいても仕方ないから良い意味で楽観的に考えようとしているところ。
紫耀、廉、海人は、仲間としてもライバルとしても共に過ごしてきたPrinceと一緒にジャニーさんに直談判し、King & Princeとしてデビューする。数字も結果も求められる新しい世界で、かつてのライバルは友として、仲間として共に戦っている。
今は自分のことで手一杯な新・信長公記の武将たちも手を取り合う未来があるのかもしれない。
〈今週の戯れ言〉
- 「TraceTrace」冒頭のピコピコ音もエンディングのクレジットの字体もゲームを意識してるのかな。
- 「信長の野望」かと思っていたら、「戦国BASARA」「イケメン戦国」だったけど。
- 横断歩道を手を上げて歩く信長くん、かわいすぎる。
- 本多くんに臭いって怒られたからって外でスルメ焼く信長もかわいい。
- しんしん発表前にBLドラマって噂流れていたよね、そういえば。
- ヤンキー漫画原作なのに、ケンカ上等じゃないところも、戦いに疑問を持っているところも、アイデンティティに悩んでいるところも平成ライダーっぽい。
- そう思うと、信長の派手な帯もライダーベルトに見えるよ。戦いのスイッチの入り方も。
- 解説の役割が黒田官兵衛に一任されている原作との変更点、分かりやすいね。史実では上司の秀吉とのコンビも微笑ましい。
- 原作と同じなんだけど、母親に毒殺されかけた伊達政宗にフレディ・マーキュリーのコスプレさせて「ママー!」って歌わせるブラックジョーク、しんどい。
- ブドウの産地で「わが故郷山形」って言ってた伊達政宗。仙台のイメージが強いけど、生まれは米沢だからね。
- 井伊と武田の因縁。井伊直政は武田信玄の息子武田勝頼(だから信玄は直政のことは知らない)と徳川家康との戦いが初陣なんだよね。その後、いろいろあって武田軍は井伊家のものになっちゃうし。
- なぜ丸太。
- 「為せば成る 為さねば成らぬ 何事も」上杉鷹山(上杉謙信の子孫)の言葉が有名だけど、この武田信玄の歌「為せば成る 為さねば成らぬ 成る業を」が元ネタ。
- 旗印を最初に立てた「大沢一郎」は大沢次郎左衛門の子孫かな。秀吉の家来で信長に殺されそうになった逸話があるけど。
- 桜の花びらも儚さの象徴だよね。
- いろんな見方ができるけど、頭空っぽにして物語に入り込めるのがすごく良いよね。
- 日曜日の終わりに笑えて、月曜日に元気になれるドラマ。