beautiful world

ぼくはまた君に恋するんだろう

「新・信長公記」第九話感想〜いつか忘れてもいい ここにいないこと〜

「人は必要な時に必要な人と出会う」

 

『真夜中乙女戦争』より

「真夜中乙女戦争」は2022年1月公開の映画。上記は柄本佑さん演じる謎の男、黒服の言葉。やっぱり廉くんのこれまでの作品もトレースしてる?

柄本親子に振り回された永瀬廉くんの2022年の軌跡(トレース)。

 

 

「新・信長公記〜クラスメートは戦国武将」

その玖「その手を前に」

脚本:金沢知樹 演出:中島悟

 

 
「貴様に旗印を掲げる」 

宣言した信長も受ける家康も両方が悲しそうな顔。

「所詮お前も敵か」と言った家康も自身で傷付いているし、信長も瞳に涙を浮かべる。ちゃんと双方が15歳な演技が素晴らしい。

 

「今は言えぬ」

クローンであること、18歳まで生きられないこと。信長は知ってるけど、言えないよね……

 

「信長の母です」

自分たちがクローンであることを知ってることを言ったことでショックを受けたみやびの顔を見て、お母さんに相談したんだろうか。だから説明しに来てくれたのかな。

 

「愛を持って育てれば人は変わる」

「俺が手を伸ばせば誰かが死ぬ」

「手は誰かに暴力を振るうためにあるんじゃない。手を取り合い、心を一つにするためにあるの。きっと和の心があなたの人生を豊かにしてくれる」

「その手を」

「その手を」

「前に出して」

「前に出すな!」

「そうすれば、あなたの道に花が咲くのよ」

 

「泣くな、うつけ」

「自分がどこへ向かうのか。そのさだめを確かめてくる」

「俺は、その意味を見つけたいんだ。自分がこの世界に生まれてきたその意味を」

「見届けてくれ」

 

「違う…違うんだ、父さん」

「俺はただ一人の人間として愛してほしかったんだ」

 

舞台を観ているような「手」の対比が素晴らしかった。差し出す手とすがりつく手。温かい陽だまりのような手と氷のように全てを拒絶する手。

家康の手は誤解なので、最終回はきちんと博士に愛されてたのが分かると良いな。

 

 

「家康、すまない」

家康が憎くて戦う訳ではない。

この廉くんの表情が絶妙で震える。

 

 

「俺は、徳川家康だ!」
「我が名は、織田信長!」

「さだめ」は家康と信長とでは違う。

家康は逃れられない「運命」であり、

信長は立ち向かうべき「宿命」。

家康は自らの「運命」に慄いているけど、信長は逃げずに自分で「宿命」を選んだ。

この二つを「俺」「我が名」との違いで表した脚本と演技が素晴らしい。

 

「是非に及ばず」

「ここからは貴様の力が必要なのだ」

「ここからは心のままに進め」

信長に手を差し伸べれられ、武田に背中を起こされる家康。

過去は考えても仕方ない。

大事なのは、これから先の未来。

そのためには、今を大切にして、歩くしかない。自分の道を。

TraceTraceの歌詞のように。

 

 

〈今週の戯れ言〉

  • すぐにごちゃごちゃ意見が対立するクラスメート、15歳っぽい。
  • 普段は大人っぽい伊達も上杉も、ちゃんと15歳なんだなと思う。
  • 秘密を抱えることになった黒田。濱田岳さんがキャスティングされた理由がわかった気がする。
  • 家康ってドイツ語でニーチェを読むくらいだから頭脳面も天才のはず。史実の家康は自分で薬の調合をするくらいの薬マニアなので化学にも強いはず。18歳以降も生きられるような薬を作ってほしい。
  • ジョーカー総長。総長って戦国武将の影武者なのかもね。トランプのジョーカーって何にでも化けられるし。他人の名前で他人の人生を生きて殺される影武者。その子孫なのかも。オリジナルに恨みつらみがあって戦国武将を戦わせた?
  • 本多の恋を知ってた徳川四天王。同性だからといって気持ち悪いとかもなく、普通に受け入れる世界。とても良い。男だって乙女で良いよね。

 

「追記」

理事長の欲望のために作り出されたクローン。それでも、いま、ここにいること、集まって仲間になれたことには意味がある。彼らもまた、出会うべくして出会ったのだ。