beautiful world

ぼくはまた君に恋するんだろう

「新・信長公記」第六話考察〜はみだして 交わって 重なって〜

人は城、人は石垣、人は堀、

情けは味方、仇は敵なり。

『甲陽軍艦』より

自国には堅固な城を築かず、領民を守るために領地外での戦が主だった武田信玄。戦国時代、最強とも言われた武田家臣団。信玄の死後、息子勝頼の代に織田信長との長篠の合戦で多くの家臣を失い、武田家が滅びたのは歴史の悲劇。

 

 

「新・信長公記〜クラスメートは戦国武将」

その陸「人は城、人は石垣、人は堀」

脚本:金沢知樹、萩森淳  演出:中島悟

 

 

「最後の勝ちを得るにはどうしたら良いか考えよ」

最後の勝ち=理想の勝利=皆の結束。だから、武田は旗印ではなく、果たし状を送ったのか。自分の挑戦権を失わないように。

 

「俺が大将か」

信長は引っ張るタイプのリーダーではない。ただ、彼にはついていきたい、盛り上げてあげたいと思わせる何かがある。それは座長としての永瀬廉くんにも共通するような気がする。

 
「風信雲書」

空海から最澄に宛てた手紙。悩む武田の後ろに見える書。平安時代真言宗を起こした空海天台宗を起こした最澄はライバル関係でもあったが、友人でもあった。

武田と上杉の関係を示唆しているのか。

(最澄天台宗総本山比叡山延暦寺は信長の焼き討ちにあうんだけど💦)

 

「恐怖とは常に内側にある。己自身の内側に。自分の勝ちに拘るがゆえに敗北の恐怖にさらされる」

「武田、誰かのために戦ってみたらどうだ?」

「自分の勝ちを捨て、誰かのために戦う。そうすれば、お前はもっと強くなれる。それを僕は誰よりも知っているのだから」

「上杉、誰にむかって偉そうな口聞いてんだ」

「我が宿敵であり、そして友である、武田、お前にだ」

 

この言葉に背中を押された武田は家康との直接対決に挑む。家康に倒された恐怖心は身体に染み付いているはずなのに。

傷だらけでも立ち向かう秀吉。

損得無しに信長を守ろうとする黒田。

彼らの生き様に武田はプライドを捨て、次のひと(大将=信長)のために石垣を築く。

 

「自分を裏切るな」

秀吉が明智に送った言葉。史実では、秀吉も明智も信長に才能を見出されて部下になった武将。こちらもライバル。秀吉の部下だった黒田と竹中もライバルで友人。「新・信長公記」は信長が主人公だけど、主人公が関わらない関係性も深く書かれているのが好きなところ。

 

 

信長はいつも他人のために動いていた。

本多のプライドを守り、

武田を追い詰めたヤンキーを倒し、

秀吉にはかつての自分を思い立たせ、

卑屈な明智には自信を持たせ、

みやびを殴った家康に宣戦布告する。

裏切者であっても許し、

器の大きさを見せる。

 

だからこそ、入学時は自分が一番だった武将たちが信長を大将としてついていこうと思うのだろう。

主題歌がichbanじゃなくて、TraceTraceなのは納得だよ。

 

〈今週の戯れ言〉

  • レモネードが無いと騒ぐペリー。幕末の日本人もあれこれ要求されて大変だったろうなあ。壮多くんに会いたいよ〜
  • 旗印じゃなくてもケンカは見たい理事長。なのに解釈違いは許せんって困った人……ラスボスかもしれないね。
  • 家康が博士を殺めたのにも、きっと乱暴だからじゃない理由があるんだろうね。だからといって良いわけではないけど。明智も去っていった孤独な家康くんが救われますように。

 

最後に公式さんが作ってくださったTraceTraceのPVが最高なので貼っておきます。歌詞と映像がリンクしているの、流石です。

【新・信長公記】主題歌「TraceTrace」ドラマオリジナルPV【主演永瀬廉 7月期日曜ドラマ】 - YouTube

 

「新・信長公記」第五話考察感想〜君の歩幅で歩けるなら〜

時は永禄3年。当時27才だった若武者が尾張の国桶狭間にて、わずか3千の手勢で2万5千もの今川義元勢を打ち破り、その名を轟かせた…その武将の名は…織田信長

織田信長は何故、桶狭間の戦いに勝てたのか?圧倒的な兵力の差があるのに。

今川勢は寄親寄子というその場での利害関係で加わった兵力(今でいう派遣社員?)だったのに、織田勢は生え抜きの部下が揃っていたからだという説もある。「信長公記」によれば決戦前夜に「敦盛」を踊っていたとされる信長。周囲も信長の覚悟を感じていたのかもしれない。

 

「新・信長公記」その伍「桶狭間の戦い

  脚本: 伊達さん  演出: 豊島圭介

 

 

「お前も裏切り者なのか」

この時点で裏切り者は今川義元真田幸村竹中重治井伊直政黒田官兵衛(裏切り者の裏切り者だけど)。

桶狭間の戦いに負けて滅亡する今川家はともかく、真田幸村は大阪の陣で家康と直接対決するが、兄は徳川方についており、どちらが勝っても真田家自体は存続するようになっている。竹中、井伊、黒田もそれぞれ息子の代には徳川方についた。家康の言葉に感動したというより立ち位置を考えての裏切りだと思わせる人選。

 

「束ねる」

「力まかせに叩いたとて良い音色は出んな。バチは加減が難しい」

「誰かを犠牲にして、上に立つ。それは「和」とは呼べん……はずだ。多分」 

ケンカを止めるのも頭ごなしに止めたりしない信長。黒田の提案に納得いかなくても全否定はしない。マイペースに見えて、いつも相手のことを考えて行動している信長。

 

「信じたもの勝ち」

「それでも私は、信じると決めたものは信じたいのです、黒田くんのことも」

「信じたもの勝ちです」

「掛け値なしに相手に託すことを恐れていた」「信じることはきっと強さなんだよ」

「お前の言う「バカ者ども」に教えてもらった」

「俺のことを信じてくれる奴と行動する」

こどもの頃、竹中に裏切られて人を信じることが怖くなった黒田。常に自分がどう動くべきか損得を考えて行動してきたのに、掛け値なしに自分を信じてくれる存在に出会えて変わった。裏切るかもしれないのに「是非に及ばず」と器の大きさを見せる信長と、真っ直ぐで「信じたもの勝ちです」といつも人のために動いているみやび。

 

ツァラトゥストラはかく語りき」※

家康がドイツ語原語で読んでいたニーチェ哲学書。「神は死んだ」というニヒリズムや、誰にでもコンプレックスがあること、それを乗り越えようとする考え方などが書かれている。他人のコンプレックスを刺激して自分に従わせようとする家康はこの本を参考にしているのかもしれない。

 

史実の家康も鷹狩りなどで身体を鍛えていたり、書物を読むのも好んでいたので、その描写か。

 

ただ、家康が本を読んでいる間に、信長はクラスメートの表情や行動を見ている。本は大事だけど、あくまでも過去であり、現在の積み重ねで歴史が作られるのを家康は忘れているような。そういうところも15歳の青さなんだよね。

 

「だが、良い器だ」 

信長は前回の黒田とみやびの会話を知らない。それでも、この一言で自分を信頼してくれていること、認めてくれたことを感じる。とても良いシーン。

 

「束ねない」

「俺はもう誰も束ねない。誰の上にも立たず、手を取り合って心を一つにする。和の心を持って」

仲間のためにあえて裏切り者になった井伊。真田や竹中、明智にもそれぞれの考え、それぞれの正義があるのを分かっているような信長。もちろん信長についている側にも。誰が裏切ったとか裏切らないとかは信長にとっては問題ではないように見える。

 

信長はいつも「君」ファーストなんだよね。

 

キンプリツアーの振替公演のお知らせのFC動画で、「平日なので申し訳ない。有給など取りにくいかも(ニュアンス)」と言ってくれた廉くん。廉くんもまた、相手の立場になって考えてくれる人なんだよね。

 

 

〈今週の戯れ言〉

  • 「お前、このままで終わる気か」「一度の敗北が全ての敗北ではない」武田→黒田の会話がエモい。
  • 「お前にしかできないことなんだ」謙信→明智の会話もエモい。犬飼くんのファンで気づいた人がいるけど、このとき明智の手は右手が下(敵意なし)になっているけど、家康といるときは右手が上(敵意あり)になっている。家康の側にいる明智だけど、真意は他にありそう。
  • 四天王に恋心がバレそうになる本多ハートは癒し。
  • また伊達さまのコスプレも見たい。
  • 美脚信長、最高最強。
  • 「器を変えれば形も丸や四角に変わるのが水。けれど水の性質は失われない。 与えられた環境の中で柔軟に変化し成長していこう」『水五訓』のなかで黒田官兵衛(黒田如水)が残した言葉。

 

※「ツァラトゥストラかく語りき」は「2001年宇宙の旅」のテーマ曲でもあるけど、意識してるのかな。

 

「新・信長公記」第四話考察〜愛を持って伝えようぜ〜

以和爲貴、無忤爲宗。人皆有黨亦少達者、是以、或不順君父乍違于隣里。然、上和下睦諧於論事則事理自通、何事不成。『日本書紀

(おたがいの心が和らいで協力することが貴いのであって、むやみに反抗することのないようにせよ。それが根本的態度でなければならぬ。)

 

聖徳太子厩戸王)が日本最初の憲法とされる「十七条憲法」の第一条に掲げたとされる言葉。最初の一文は「和をもって尊しとなす」という読み下し文で知られる。

不明な点が多すぎて明治時代以前の歴史を勉強しない(だから戦国時代もしらない)2122年には聖徳太子も知らないんだろうな。

 

「新・信長公記」その肆〜「和の心」

脚本: 金沢知樹、萩森淳  演出:豊島圭介

 

 

「貴様たちで考えろ」

PBB作戦を考えたのも、クラスメート全員に同じ文字を送ったのも、原作では信長らしいけど、ドラマの信長は自分から引っ張るタイプではないのね。自分から引っ張るリーダーが良いのか、周りが支えていこうとするリーダーが良いのか。

 

「お前はまだ死んでない」

加藤が武田に向けて言った言葉。先週の家康のセリフ「お前は既に死んでいる」を受けたもの。武田復活の鍵となる。

 

「器」

どの器がふさわしいか見定めるという黒田。戦国時代もそんな感じだったんだろうな。みんながみんな天下を取りたいわけではなくて。

 

「自分も含めて」

みやびをかばう信長の演説でも自分だけが特別ではない、みなと同じだと言う信長。徹底的に民主的。

 

「あの張り紙は貴様らか」

そのくせ、一瞬で真相を見抜く信長。うつけではないよね。みやびの○も「たいしたうつけが」と見破っていたし。

 

 

 

「歴史は繰り返す」とはいうけれど、家康のやり方って、ヒトラースターリンなど歴史上の独裁者そのものなんだよね。横の繋がりを嫌い、密告させてお互いを疑心暗鬼にさせて。恐怖で従わせて、その分取り巻きには良い思いをさせて。

 

そんなやり方を知ることができるだけでも歴史を学ぶ意味やドラマを見る意味があるんじゃないのかな。

 

「和」は和食や和菓子など「日本の(われわれの)」って意味があるけど、もちろん「平和」の「和」でもある。

 

ウクライナ進行のあった2022年に放送の意義があるドラマ。

 

 

 

 

〈今週の戯れ言〉

  • 武田をバカにされて初めてフードを脱いで怒る上杉も、井伊をコケにした家康に本気でくってかかる本多も良い。
  • 陶芸は基本的には各々の兜かな。伊達は三日月ならぬ土星みたいだけど。後ろに見える鹿の角は本多だよね。
  • 突然のドブネズミ発言は、史実で秀吉のことを「ハゲネズミ」と呼んだから?(ちなみに明智のことは「キンカン頭」と呼んだとか。ハゲ頭だったので。←パワハラひどい)
  • モップを見舞いにわざわざラッピングして持ってきた家康もあれだけど、この時点で井伊は既に家康側なんだよね。単に徳川に感銘を受けたって訳では無さそう。四天王のメンバーを守るためかな。
  • 黒板の日付が「夏至」なのは、太陽の出てる時間が一番長いから。家康くん、心を入れ替えてまた昇ってほしい。

「新・信長公記」第三話考察〜想いの全てが嘘だって言うなら〜

有名なホトトギス狂歌。江戸時代後期、松浦静山の随筆『甲子夜話』に書かれたもの。江戸時代なので、時の将軍様に都合良く書かれているのは当たり前。最近の研究では、実際はどの武将もイメージとは性格が違う、と言われている。

信長は裸足で戦う部下に自分の草履を与えたり、領民と一緒に魚を取ったり、身分に関係なく部下に取り立てたり、優しい一面があったとされる。

家康は短気だったという説もある。部下の馬がすれ違った時に当たったことで殺そうとしたこともあったとか。

(秀吉は割愛します💦)

今となっては本当のことは誰にも分からない。虚実入り混じった世界。

 

 

「新・信長公記ークラスメートは戦国武将」

EPISODE3 「裏切り…蘇る本能寺の変!」

脚本: 金沢知樹、萩森淳 演出:中嶋悟

 

「勝利の先に何を望む?」

信長の問いに「家康を止めたい。家康が旗印戦から脱落すれば学園に平和が訪れる」と答える明智

反家康同盟には加わらないが、友人としてなら側にいるという信長。損得勘定で動きたくなかったのかもしれないし、家康が負けても特進クラスのみんなが総長を狙っているのを、平和にはならないのを知っているのだろう。

 

 

「裏切り者」

明智光秀と言えば、本能寺の変。ただ、史実で信長を裏切ったのは明智だけではない。織田家家老なのに信長の弟について信長と戦った柴田勝家、妹婿の浅井長政、二度も謀反を起こした松永久秀など。逆に言えば、信長は人を信じすぎるのかもしれない。

 

「日陰の道」

銀杏高校の特進クラスは、みやび以外、全員不良(武将)。日陰者という言い方もあるけど、表舞台の人ではない。実は戦国時代も江戸時代も武将より天皇や貴族のほうが身分としては高い。実質として江戸幕府を300年も続け、武士の身分を確立した徳川家康(史実)は「裏を表にした」人。家康(クローン)はオリジナルの道をトレースしたいんだろうか。本当にそれが家康のしたいことなんだろうか。

武田に執着する理由は史実で唯一負けた相手だから?自分がクローンだと知ってる家康は、単にトレースするばかりではなく、オリジナルを超えたいんだろうな。

 

史実では、幼い頃から人質として敵のところをたらい回しされていた家康。クローンが三歳で博士を殺した後は、どうやって生きてきたのか。温かい言葉をかけてくれた人はいなかったのか。

家康も寂しい人だな。(だから若いのに白髪あるのね)

 

「是非に及ばず」

直訳すれば、是=GOOD、非=BAD。

良いも悪いもない。

考えても仕方ない。

行動したほうが良い。

 

史実の信長がどう思ってこの言葉を発したのかは分からない。けれど、最後の最後まで戦ったとの説もある。

 

本能寺の変も何故明智が起こしたのかは分からない。怨恨説や暴君討伐説、秀吉陰謀説、家康陰謀説などもある。

ただ、どの説でも決断したのは明智本人。ドラマ版で「自分がない」と言われた明智に「貴様も正直に生きれば良い」とアドバイスした信長。そのアドバイスに従って自分を裏切るのを止めて家康に降伏する明智。止めようとした信長は明智の決意に触れて呟く。「是非に及ばず」と。

 

地球儀を見て「全てが表で全てが裏。そこが面白い」と言った信長。「人が歩く道に表も裏もない。必死に歩けば、それが自分の道になる。きっと」

 

「和の心を持って…」との母の言葉を思いだし、自分の道を見つけた信長は「天下を獲る」と書いた書を掲げ叫ぶ。

「是非に及ばず」と。

 

 

 

〈今週の戯れ言〉

  • 伊達さまの占い、2122年でも「手紙」なの?アナログすぎない?
  • 今週はコスプレなくて寂しい。
  • コスプレと言えば、史実の信長公、天女の格好をして領民を楽しませたことがあります。れんれんバージョン見たすぎる。
  • 恋愛相談で自分のことだと一瞬も思わないみやびちゃん推せる。紅一点なのに。
  • 和歌山の干し柿、美味しそう。
  • 好きな人の好みを知ってるの強いね。
  • 明智にあげたのは、いつも持ってる自前の分?きびだんごあげる桃太郎みたいな信長くん。
  • 「お前はもう死んでいる」ケンシロウよりラオウっぽいよね、ゆきちゃん。
  • 筆は達筆すぎるのに、黒板の文字はあれな信長くん。れんれん比びっくりするくらいキレイだけど。
  • 旗印戦にも興味ない信長なのに立ち上がったのは、自分がトップに立つことで戦乱の世を終わらせたいんだね。
  •  

「新・信長公記」第二話感想〜誰かをなぞる筆〜

負けると思えば負ける

勝つと思えば勝つ

豊臣秀吉の言葉とされる。

 

「新・信長公記〜クラスメートは戦国武将」

Episode.2 天下統一へ秀吉が出陣!

脚本:金沢知樹、萩森淳 演出:中嶋悟

 

「ゴミが」

家康の口癖。

人を人とも思わない性格が現れている。

転校初日に「ゴミが目に入らないようにな」とグラサンを外さなかった家康に「人の目を見て話せ、と親に教わらなかったか?」と言う信長。信玄と家康の一発触発の雰囲気に「焼けた焼けた〜」と呑気な声で仲裁に入る。マイペースで何も見ていないようで、周りをよく見ている信長。

 

「倒れてからが始まりだ」

信玄を救った信長の舞いを自分だと偽り、明智の作った卵焼きを自分のものだと手柄を横取りし、自分の得意な将棋や茶歌舞伎で旗印を立てて勝利する秀吉。旗印戦を頭脳戦と言ってはばからない秀吉は「卑怯者」と言われたことで、銀杏高校に来た初心を思い出す。

その心意気に清正も秀吉を認める。力だけでも知恵だけでも人の心は動かせない。

そのことを黒田官兵衛は知っていて、あえて開眼させたのか。来週以後の秀吉が楽しみ。

歴史が勝者によって都合よく語られたり、事実が変えられることがあることも含んでいる言葉。

 

「親に教わらなかったのか」 

22世紀の秀吉は農民出身ではなく、私立小学校を思わせる制服を着ている。(普通→ヤンキー校じゃないってことかな)小学生時代だけでなく、育ての親もいることが示唆される。

史実では尾張出身の秀吉は関西弁だし、同じく清正は熊本弁。それぞれ所縁の土地の言葉を使う。やはり史実とは違う。

徳川四天王の井伊は家康に歯向かうし。

敵だった毛利を味方につけるし。

 

敦盛に身体が反応する信長や、戦に胸踊らせる武将たちなど、DNAレベルの性格や立ち振る舞いは同じだけど、15歳までの経験や生き方で変わること、史実の武将とは全員違う人物であるを意味しているのかも。

 

マンガ原作を実写化するときにはどうしても賛否両論あるけど、原作をそのままなぞるだけなら実写化の意味ないんだよね。個人的な意見だけど。生身の俳優さんが演じることで新たな生命がキャラクターに吹き込まれる。原作を読んでいても新たな世界を楽しめる。そんなことも実写化の醍醐味のひとつだよ。

 

 

 

〈今週の戯れ言〉

  • 琵琶を持っている上杉謙信の絵が残っている。本番、自分で演奏した犬飼くん、凄い。
  • 本多忠勝くんがこんなに癒やしになるとは。信長のシェフになりたいのかな。
  • 本多ハートの卵焼き。自分は甘いものは苦手なのに信長の好みに合わせているホスピタリティが凄い。
  • 流しそうめんも流す役なのに嬉しそう。(蜻蛉切(槍)の隠喩?)
  • 史実では、本多忠勝は織田・徳川連合軍VS浅井・朝倉連合軍の姉川の戦いで、負けそうになったときに単騎で敵陣に乗り込み、突破口を開いた人物。
  • その際、信長に「花も実もある」と誉められている。(良かったね)
  • 犬飼くんの「絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男」のオマージュでもあったのね。こういう些細なところ好き。
  • 「旗印戦」は負けてもポイントを失わない。だから、同じ相手に二度勝てばポイントが倍貰える。酒井と榊原に二度旗印を立てた秀吉は、そのことを実験というか確かめたかったのかな。これって、勝つ側と負ける側がタッグを組んでいたら、いくらでもポイント稼げそうなんだけど………(原作は途中までしか読んでない💦)
  • 明智の卵焼きを自分の手柄にする秀吉。信長が唯一負けて逃げた金ヶ崎の戦いで殿(しんがり=最後尾)を務めて名を上げたことかな。秀吉が有名だけど、明智も殿を務めていたんだよね。アピール上手の秀吉とアピール下手な光秀。
  • 武田も秀吉も、それぞれの成長物語にもなってて、感動。まだ15歳設定が活きてる。
  • 方言なんかで見なくなるのもったいないよ。
  • 東京出身で東京で生活しているのに、中学時代を関西で過ごしたからって関西弁を標準仕様で喋るアイドルもいるんだよ。永瀬廉くんっていうんだけど。

 

オリジナル要素も多いけど、原作にも、それぞれの武将にもリスペクトが感じられる作品だよ。廉くんの民放連続ドラマ初主演作品が「新・信長公記」で良かった。

「新・信長公記」第一話感想〜話したいことがあったんだった〜

草葉におく白露、

水に宿る月よりなおあやし。

金谷に花を詠じ、

榮花は先立って、

無常の風に誘わるる。

南楼の花をもてあそぶ輩も

月に先立って

有為の雲にかくれり。

 

人間五十年、

下天のうちをくらぶれば

夢幻の如くなり。

 

ひとたび生を享け、

滅せぬもののあるべきか。

 織田信長が愛したとされる幸若舞「敦盛」。敦盛とは平家物語に出てくる平清盛の甥で笛の名手平敦盛のこと。その平敦盛を討った源氏の熊谷直実が出家する際の心情を綴ったもの。

 

「新・信長公記‐クラスメイトは戦国武将‐」

EPISODE1 新・戦国時代の幕開け

脚本:金沢知樹、萩森淳 演出:中嶋悟

 

「狂った男の狂ったロマン」

この冒頭の言葉を聞いたとき、びっくりというより何故か懐しくさえ感じてしまった……

設定は違うけど、ひとりの男に振り回される物語があった。ジャニワ。

 

主演の永瀬廉くんが自身のラジオで「ジャニーズワールド」みたいと言った「新・信長公記」。ぶっ飛んだ設定とスピード感、濃厚なトンチキ感がまさにそう。

ただ、ジャニーズワールドと言えば、元々はひとりの少年が狂人的プロデューサーに導かれ、様々な世界や過去、未来を旅し、平和のありがたさや日本の素晴らしさを見つけていく物語。過去と未来が交錯したこの世界観にも合致するところもある。

 

私も歴史好きだから、名だたる戦国武将をひとつのところに集めたら、誰がどんなに強いんだろうと思う気持ちはわからなくもない。

 

ジャニーさんも同じようなことやってたよね。ジュニアだとファンがびっくりするような組み合わせを試してみたり。

紫耀くんが急遽東京の舞台に立つことになった夜に、大阪の自宅にいた廉くんを呼び寄せて。風呂にも入っていたのに三十分で新幹線に飛び乗った廉くん。入所したばかりの海ちゃんに「あの二人どう?」と聞いて「楽しかった!」との返事に三人にユニットを組ませたジャニーさん。100年にひとりの逸材平野紫耀と天才ダンサー髙橋海人と、努力の天才永瀬廉を組み合わせてMr.KINGってユニット名をつけて。どんな化学反応が出るのか楽しんでいたんだろうな。

 

「あの雲は何故生まれてきたのか」

総長戦にも興味ない信長。自分をアピールしたりもしない。他の武将たちとは違う。身体の中のDNAなのか、敦盛を聴くと踊り出す信長。戦っているときの表情がどこか切ないのも見ていて胸が痛くなる。自分がクローンと知ったとき、どんな表情を見せるんだろう。

 

「父親との約束、意地でも果たせ。意外とイージーかもしれない」

信長のダジャレなんだけど、廉くんっぽいセリフ。負けず嫌いなところと、グダグダ悩んでいても仕方ないから良い意味で楽観的に考えようとしているところ。

 

 

紫耀、廉、海人は、仲間としてもライバルとしても共に過ごしてきたPrinceと一緒にジャニーさんに直談判し、King & Princeとしてデビューする。数字も結果も求められる新しい世界で、かつてのライバルは友として、仲間として共に戦っている。

今は自分のことで手一杯な新・信長公記の武将たちも手を取り合う未来があるのかもしれない。

 

 

〈今週の戯れ言〉

  • 「TraceTrace」冒頭のピコピコ音もエンディングのクレジットの字体もゲームを意識してるのかな。
  • 信長の野望」かと思っていたら、「戦国BASARA」「イケメン戦国」だったけど。
  • 横断歩道を手を上げて歩く信長くん、かわいすぎる。
  • 本多くんに臭いって怒られたからって外でスルメ焼く信長もかわいい。
  • しんしん発表前にBLドラマって噂流れていたよね、そういえば。
  • ヤンキー漫画原作なのに、ケンカ上等じゃないところも、戦いに疑問を持っているところも、アイデンティティに悩んでいるところも平成ライダーっぽい。
  • そう思うと、信長の派手な帯もライダーベルトに見えるよ。戦いのスイッチの入り方も。
  • 解説の役割が黒田官兵衛に一任されている原作との変更点、分かりやすいね。史実では上司の秀吉とのコンビも微笑ましい。
  • 原作と同じなんだけど、母親に毒殺されかけた伊達政宗フレディ・マーキュリーのコスプレさせて「ママー!」って歌わせるブラックジョーク、しんどい。
  • ブドウの産地で「わが故郷山形」って言ってた伊達政宗。仙台のイメージが強いけど、生まれは米沢だからね。
  • 井伊と武田の因縁。井伊直政武田信玄の息子武田勝頼(だから信玄は直政のことは知らない)と徳川家康との戦いが初陣なんだよね。その後、いろいろあって武田軍は井伊家のものになっちゃうし。
  • なぜ丸太。
  • 「為せば成る 為さねば成らぬ 何事も」上杉鷹山上杉謙信の子孫)の言葉が有名だけど、この武田信玄の歌「為せば成る 為さねば成らぬ 成る業を」が元ネタ。
  • 旗印を最初に立てた「大沢一郎」は大沢次郎左衛門の子孫かな。秀吉の家来で信長に殺されそうになった逸話があるけど。
  • 桜の花びらも儚さの象徴だよね。

 

  • いろんな見方ができるけど、頭空っぽにして物語に入り込めるのがすごく良いよね。
  • 日曜日の終わりに笑えて、月曜日に元気になれるドラマ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

映画と原作の違いから観る「真夜中乙女戦争」〜降りれなくなった猫〜

注意:すべて私の個人的な見解です。原作者とも映画公式とも出版社とも何の関係もありません。

 

「先輩」
  • 不眠症(映画「ファイトクラブ」のオマージュ?)
  • 原作の" 私"が"先輩"に会うのは黒服よりずっと前。
  • 面接(集団)で聞かれる内容が少し違う。
  • 美人なのは一緒。
  • ダストボックスに入っている"私"を庇うために「弟」と言う。(顔が全然似ていないと"私"から指摘)"私"にも姉がいる。(原作の"私"には容姿コンプレックスがあるのかも)
  • 「かくれんぼ同好会」のイベントに「悪戯」がある。
  • すこしあざとくて、隙もあって、話も合わせてくれて、原作の"先輩"は、"私"にとっての「理想の女性」あるいは「イマジナリーフレンド」なのかも。
  • 原作ではキラキラなインスタ女子だけど、映画の"先輩"はノートに気持ちを書いたり、アナログっぽいよね。
  • 映画版は、度を越したいたずらに"私"が関わっているのを薄々感じていて探りを入れたりするけど、原作ではそんな様子は見られない気がする。
  • "先輩"と"私"、二人で東京タワーデートする。
  • 最後の"私"の"先輩"に対するセリフ、一部分、大切なところが変わっていて、映画全体に対する印象が変わっているので、原作を読んで確かめてほしい。

 

「黒服」
  • 原作では屋台のラーメンを食べたり、庶民的というか親しみやすいかも?
  • 原作ではアジトの「映画館」は"黒服"と"私"の二人で作りあげたもの。
  • 「悪戯」も虐げられた常連から見ると、ある意味「スカッとジャパン」的な意味もあるんだよね。"黒服"の考える「正義」なのかもしれない。
  • "私"の二重人格(走るシーンとか一部匂わせているけど)というより、いわゆる「ネット人格」だと私は思う。そうじゃないと、"私"の顔を知ってる"佐藤"が黒服に心酔して"常連"になる説明がつかないので。ただ、2018年の小説発表当時より時代が追いついてしまっている気がする。SNSでいるよね、お金配る人。(「猫」のポラロイドはSNSのアイコンだよね)(だからポラロイドが配られた時点で「猫」がいなくなってしまったんだね😢)←原作では最後まで出てくる猫。
  • 「真夜中乙女戦争」は東京だけでなく、全国に広がっている。

  • 「(真夜中乙女戦争を)決行するか中止にするか早く決めろ」と"私"に言う。 
  • イマジナリーフレンド的な"黒服"と違って、映画版はひとりの別の人として描かれていたのが好きだった。
  • 原作では「黒服」=「東京タワー」?。東京タワーを壊したい"黒服"と壊したくない"私"。
  • 黒服の最後が全然違うので、こちらも原作読んで確かめてほしい。

 

「私」
  • 原作の実家は映画ほど経済的に困窮していないように思える。本人は貧乏だけど(中高私立高校→東京の私大)(コロナ禍を反映しているのかも)
  • ノローグは標準語だが、口に出すセリフは関西弁。"先輩"や"黒服"といる時も。
  • とにかくよく喋る。映画冒頭くらいずっと喋ってる。
  • 佐藤(佐野くんの役)は、"私"のことを友達と思ってくれている。佐藤くんは佐藤くんで良いところもあるひと。
  • (友達と知り合いの境目ってどこだろうね)
  • 原作はウザくて友達ができない(個人的な感想です)。映画は傷つくのが怖くて友達ができない。(コロナ禍で自宅に引きこまらなきゃならない現実の大学生を反映してる?)
  • 一度やらかしたら無かったことにはできないSNSを反映しているのかも。(佐藤くんの友達(小島くんとか)のコイツに関わりたくない雰囲気が2回目以後見ると分かるね)
  • 「普段あまり喋らないから、家庭教師のイメトレする」映画版の"私"…どこまで真面目で可愛いの………
  • 繊細で傷つきやすくて、傷つかないようにしてる"私"。先輩みたいに上手くやれれば良いんだろうけど、できなくてもがいている無数の"私"が世の中にいると思う。
  • 「絶望」はしてるけど、「諦めていない」んだよね。「絶望」は「光」になるって分かる。生きていればなんとかなることもある。

 

「MISTY」
  • 作者のFさんが恋愛小説を書いてほしいと言われて「真夜中乙女戦争」を書いたと文庫版あとがきに載ってたけど、やっぱり恋愛小説、恋愛映画なんだと思う。
  • "私"は"先輩"にも"黒服"にも恋をしていて、でも、「本命」は"先輩"で。"先輩"も"私"に恋をしているけど、「本命」の彼氏は別にいて苦しんでいる。"黒服"は"私"に恋をしていて、"私"の望むものを何でも与えてくれる。けれど、"私"の「本命」にはなりえないから復讐するって切ない。
  • 友達がいっぱいいても、本当に心を許している「親友」は「カナ」しかいなさそうな映画版"先輩"の孤独。何でも言うことを聞く信望者に囲まれながらも"私"だけに執着する"黒服"の孤独。友達もいない、誰かと話をすることすらほとんどない"私"の孤独。
  • 原作の"私"は「真夜中乙女戦争」に積極的に関わっていて、"先輩"や"私"が悪戯のリストに上がってきて初めて狼狽えるけど、映画は"私"の知らないところで計画が進んでいく。(爆弾を作っているのを見て見ぬふりしてるけど)
  • "私"の二重人格でもイマジナリーフレンドにもしなかった映画版"黒服"と"先輩"。個別の存在としたことで、"黒服"にも"先輩"にもそれぞれの「正義」「生きづらさ」があるのを描いてくれたのは良かったと思う。
  • 映画の"黒服"は"私"に責任を負わせたくなかったのかも。"田中"に全責任を追わせるくらい簡単。殉教するだろう田中さんも満足そうなところがカルト的で怖い。
  • 万が一、"私"が生き残るとしたら、劇中では描かれなかった、"先輩"と一緒に「東京タワー」に行ける未来があるかも。生きているってことは、それだけでやり直しもできるし、希望なんだよ。
  • 全体的にコロナ禍を反映しているのかな。行きたいところにも行けない、会いたいひとにも会えない。みんな、お金も無い。社会の価値観もひっくり返った時代にこそ観るべき映画なんじゃないかな。

 

 

題名の「降りられなくなった猫」は"先輩"が"私"に向かって歌う「Misty」のFさん意訳よりいただきました。"私"、"黒服"、"先輩"それぞれの正義も生き方もあり、愛情もあって行き着いてしまった結果が「最悪のハッピーエンド」でも、「最高のバッドエンド」でもあると思う。

https://youtu.be/78BdpPHIDqw