beautiful world

ぼくはまた君に恋するんだろう

「夕暮れに、手をつなぐ」第2話第3話感想〜ふざけすぎた季節のあとで

汽車を待つ君の横で

ぼくは時計を気にしてる

季節はずれの雪が降ってる

「東京で見る雪はこれが最後ね」 と

さみしそうに君がつぶやく

 

なごり雪も降る時を知り

ふざけすぎた季節のあとで

今春が来て 君はきれいになった

去年よりずっときれいになった

 

動き始めた

汽車の窓に顔をつけて

君は何か言おうとしている

君の口びるが

「さようなら」と動くことが

こわくて下を向いてた

 

時が経てば幼い君も

大人になると気づかないまま

今春が来て 君はきれいになった

去年よりずっときれいになった

 

君が去ったホームに残り

落ちてはとける 雪を見ていた

今春が来て 君はきれいになった

去年よりずっときれいになった

 

なごり雪

歌:かぐや姫

作詞作曲:伊勢正三

なごり雪』は1974年のかぐや姫の楽曲。後にイルカのカバーで広く知られることになる。

 

「夕暮れに、手をつなぐ」

第2話「まさかの恋が、始まった!」

第3話「いつか、この夢が咲く。」

演出:金井紘 脚本:北川悦吏子

 

前からの知り合いのように、兄妹のようにはしゃぐ音と空豆

なんでも拾ってくれる空豆

男性だからと適当にあしらうとかもなく、「(お手玉を)半分寄こせ」と対等な立場で向かい合ってくれる音。

 

清楚な空色のワンピースを着た空豆が「翔太は何でも知ってた」と言うとき、明らかに気になっているのに「婚活も良いね」と空豆の気持ちに寄り添う音。空豆の傷付いた心が上書きされるのなら、自分じゃなくても良いと思ってそう。

 

なごり雪」を空豆みたいな歌だと言う音。いつか東京から旅立つ人だからこそ、あまり深入りしないようにしていたのかも。

 

そんな音が曲ができたとき、真っ先に聞いてほしいのは空豆。婚活中の空豆に、自分の世界がある響子さんに、遠慮して寂しくてセイラに電話を掛けてしまった音。「蕎麦屋の出前」に繋がるいたずらではと思ったのは無意識に空豆を求めていたのか。

 

ほんの少しのタイミングのずれ。

 

何も無いと思っていた焚き火の底から焼き芋を見つけて半分こする二人。

水族館デートではそれぞれ別の物を向かい合って食べていたのに。

並んでインスタントラーメンを食べる空豆と音。左利きの音の手がぶつかっても「ごめん」で済む関係。

 

聞きにくいことを誤魔化さずにストレートに聞く音。

大事な存在になってきているからこそ、音には言えない空豆

「いつでも……言わなくても、どっちでも」

 

 

音がCMが決まったことを真っ先に知らせたいのはやはり空豆。「空豆が救ってくれた音楽」だから。

(おそらく母のデザインの)ドレスに心を奪われた空豆は子供のように駆け寄る。音にもらったオレンジの靴で。

そして、そのことを音にも知ってほしくて部屋着で冬の街まで駆け出す。音も空豆がどこに惹かれたのか一目見て理解する。

 

もう王子様に幸せにしてもらうのを待ってる空豆ではないのだから。空豆自身にも心沸き立つものがあり、自分の足で歩いていける人だから。

 

だからこそ音は本音を言えたのだろうか。

「帰るなよ」「いろよ」

 

それは、恋というより、夢を諦めてほしくないエールなのかもしれない。

 

 

個人的には恋とかすっ飛ばして、こんなに気の合う人なかなかいないだろうから結婚すればって思っちゃう。みもふたもないけど。

「夕暮れに、手をつなぐ」第1話感想〜シンデレラガール〜

 

誰もがみんな嘆いてる

恋の魔法には期限がある

時が経てば宝石もガラス玉さ

もしもそんな日が来たって

キミは朝の光にかざして

それを耳元に飾るんだろう

ボクはまたキミに恋するんだろう

『シンデレラガール』

作詞作曲:河田総一郎

King & Princeの2018年発表のデビュー曲。デビュー曲なのに、魔法が解けた後にも言及するのって誠実で美しいなと思った覚えがある。いろいろな解釈ができるだろうけど、ひとつには「恋が醒めても残る真実の愛」かもしれない。

 

 

「夕暮れに、手をつなぐ」第1話

「出会い。青春を思うとき、なぜ人は切なくなるのだろう」

演出:金井紘  脚本:北川悦吏子

 

最初に謝っておきます。私、北川先生とは合わないなとずっと思ってましたが、食わず嫌いならぬ見ず嫌いでした。(朝ドラの漫画家編は好きでした)

 

 

とてもとても繊細な優しさに包まれたドラマでした。

 

 

番宣で猪と言われていた空豆は洞察力も気遣いもあるし、クールと言われていた音は優しさの固まりだし。

 

方言を使っていない音に「良い旅を」と笑いかけ、噴水でずぶ濡れになっても「すぐ乾くから」と笑い飛ばす。(自分で買い直すところで平気じゃなかったんだなと分かる)音には帰ると言って帰らなかったり。音を翔太のマンションに連れて行ったのも、翔太に気を遣わせないためだったのかもしれない。実際、浮気には怒ってないし。

 

音も噴水から咄嗟に携帯(大事な夢が詰まったもの)を守るけど、すぐに「服買おう」って言ってあげるし、自殺しようとしてるのかもしれないとハサミやカミソリを隠そうとするし(そこに気がつく空豆も賢い)。

 

小さい頃に空豆を庇った翔太も優しい人なんだろうな。空豆の実家のおばあちゃんのためにエレベーター付けてあげるし。新彼女には空豆のことを相談してたんだろうし。もしかしたら本当に結婚するつもりだったのに、レストランに「大東京」トレーナーを着てくる空豆の社会性の無さにもうダメだと思ってしまったのかもしれない。その前に言い出せないのは間違えた優しさだけど。(彼女さんが謝ってたのはそういうこと?指輪もマグカップも早すぎるけど)

 

空豆は翔太に守ってもらうことで学生生活を楽しめた。空豆にとっては文字通りシンデレラの王子様だったんだろうな。でも、それは小さな世界で、翔太は先に大きな世界を知って。魔法が解けてしまって。

 

冒頭の2022年も履いていた黒のローファー、もしかしたら学生時代から履いてたものかも。(高校生のバイトで買えるという意味の安物)指輪とローファーを失い、ビタミンカラーのスニーカーを手に入れた空豆は自分の足で歩き始めるんだろう。もう二度と脱げない靴で。

 

 

翔太に止めてもらった「ロミオとジュリエット」のようにバルコニーからお互いの名前を聞く空豆と音。素直に「良い名前」と言ってくれて、音の作る曲にも「ええ曲じゃあ」と感動してくれる空豆に音は救われたんじゃないかな。※1

 

「心が無い」と言われ、自分に自信も無くし、もう会わない人に対する親切心で咄嗟に「マンボウ」と優しい嘘を吐く音。

 

おとぎ話の「幸せにしてほしい」「幸せにしてあげる」依存関係じゃなくて、お互いに背中を押して並んで歩けるような関係になると良いなと思う。※2

 

番宣や事前インタビューで持ってた印象と全然違ったから、やっぱり自分の目で見てみないと分からないな、ドラマって。そこが面白いところなんだけどね。

 

 

 

 

※1「どんぐりころころ」はいわゆるヨナ抜き音階でできているので郷愁を誘うメロディーなんだよ。だから泣くのは全然不思議じゃない。有名なのは「カイト/嵐」とか「夜に駆ける/YOASOBI」「春泥棒/ヨルシカ」。

 

※2  シンデレラの靴とか、アリエルとか、偶然に次ぐ偶然とか、おとぎ話でフィクションなんだよって言ってくれている気がする。だったら、そういうものだと純粋な気持ちで楽しみたいな。

 

「新・信長公記」第十話感想考察〜君の絵に愛を〜

「正義は剣じゃありません。盾です」

「正義というものは振りかざして相手を傷つけるためにあるのではないと思います」

『俺のスカート、どこ行った?』より

『俺のスカート、どこ行った?』は2019年の古田新太さん主演ドラマ。廉くんの初の学園ドラマでもある。このドラマで廉くんの演じるクールな明智秀一くん(登場人物全員城の名前なので…)に墜ちた人も多いのでは?

TVerにもHuluにもないけど、どこかで見てほしいです)

 

 

「新・信長公記~クラスメートは戦国武将〜」最終話「友よ」

   脚本:金沢知樹 演出:中島悟

 

「実に人の道とは面白い」

「この徳川にとっては険しい道のほうが歩きがいがある」

「人の一生は、重き荷を負うて遠き道を行くが如し。急ぐべからず。不自由を常と思えば、不足なし」は史実の徳川家康の言葉。理事長、ご先祖様の言葉も知ってるだろうに。平和のためにネオ江戸幕府を作って鎖国したかったのかな。

 

「信長、お前のためなら死ねる」

「今だけは君の盾になるよ」

「悪くないもんだな、誰かの盾になるのも」

……本多くん、「愛と誠?」(誰が分かるの…)

 

「宴」

「よく一人で耐えてきたな」

伊達に肩を抱かれた信長、若干肩の荷が取れたような幼さが一瞬見てとれる演技。

 

「おれは本当は強いんだよ」

明智の言葉に大きく頷いてしまった。史実の明智光秀は本当は強いんだよ。

 

「酒はそんなにガブガブ飲むものではない」

「酒は飲め飲め〜飲むならば〜」の黒田節は黒田官兵衛の息子、黒田長政の逸話が元になっているのを踏まえると面白い。

 

「(水を飲んで)苦い……ミルク飲みたい」

博士に息子がいるってことは奥さんもいたんだろうね。三歳で理事長に博士を殺される前は、家康も家族で仲良く暮らしていたのかもね。ちょっとそんなことを思ったセリフ。

 

酒を水に変えたのは「水盃」(今生の別れ)だけど、本人たちはそうは思ってなくてお酒だと思っているところが良いよね。もちろん空気を読んだ演技の可能性もあるけど。

 

 

「覇王」

「覇王」とは徳によらず「武力」や「策略」で諸侯を従えて天下を治める人のことをいう。「王道」は「徳」を持って世を治めること。それを遂行する者を「王者」と呼んだ。

 

ちなみに、家康は元は松平姓だったが、「得川」の名字を名乗ることになったときに「得」の字を「徳」に変えたとされる。

 

「我が名は覇王、織田信長!」

「うつけども!この信長の前にひざまずけ!」

軍議のときに声の出し方で武将たちをまとめたのも凄かったけど、この声だけで鎧武者たちを屈服させた信長(廉くんの演技)に鳥肌が立った。

 

「この声の先に貴様の道はない」 

「こちらに戻ってまいれ、織田信長

「血に従え!」

「うつけが…」

みやびの声で現実に戻ってきた信長。歴史の織田信長の血を借りなくても決着をつけることができる。

 

信長の行く道は「覇王の道」ではない。

花咲く「王者の道」なのだから。

 

 

「きっと和の心があなたの人生を豊かにしてくれる。その手を…前に出して。そうすれば、あなたの道に花が咲くのよ」

「母上、人生を豊かにしてくれる顔がたくさんあります」

「みやび。生まれてきた意味を見つけた」

「花が…咲いた」

「私が未来に連れていきます」

恋よりも愛。愛よりもなお強い絆。

まっすぐな声を届けて、いつも側にいたみやびだから信長を連れ戻すことができたのだと思う。

 

「みやびおめでとう。貴様はずっとうつけだ 信長」

 

 

〈今週の戯言〉

 

「永瀬廉のTrace」

俳優永瀬廉のこれまでの軌跡を集大成したような演技だった。

 

演技の基本中の基本、「その人物が何を考えているのか考える」を久万監督に教えてもらった『うちの執事が言うことには』の烏丸花穎。

 

目の光を自在に操る演技で頭角を表した『俺のスカート、どこ行った?』の明智秀一。

 

ゴールデン初主演ドラマの『FLY!BOYS!FLY〜僕たちCA始めました』のひたすらに前向きな朝川千空。

 

アイドル要素ゼロの体当たり演技でアカデミー新人俳優賞を受賞した『弱虫ペダル』の小野田坂道。

 

過酷な人生や様々な感情を柔らかい笑顔の奥に隠した『おかえりモネ』の及川亮。

 

闇落ち大学生を淡々と、時には切なく演じる『真夜中乙女戦争』の私。

 

初の時代劇で独特の所作、言葉遣い、発声なども覚えたであろう『わげもん』の伊嶋壮多。

 

 

「ひとつひとつのことを吸収していくような気持ちで、全部が学ぶ場所やと思ってやってます」と「うちの執事が言うことには」のクランクアップで語っていた廉くん。

 

アカデミー新人俳優賞のスピーチで「出演させて下さる作品に少しでも華を添えられるようになりたい」と言っていた廉くん。

 

 

群像劇が多い廉くんだけど、その中できっちり「華」を添えているよ。

 

そしてきっとまだ「通過点」に過ぎない。

永瀬廉くんの未来が花咲く王道でありますように。

 

 

「新・信長公記」第九話感想〜いつか忘れてもいい ここにいないこと〜

「人は必要な時に必要な人と出会う」

 

『真夜中乙女戦争』より

「真夜中乙女戦争」は2022年1月公開の映画。上記は柄本佑さん演じる謎の男、黒服の言葉。やっぱり廉くんのこれまでの作品もトレースしてる?

柄本親子に振り回された永瀬廉くんの2022年の軌跡(トレース)。

 

 

「新・信長公記〜クラスメートは戦国武将」

その玖「その手を前に」

脚本:金沢知樹 演出:中島悟

 

 
「貴様に旗印を掲げる」 

宣言した信長も受ける家康も両方が悲しそうな顔。

「所詮お前も敵か」と言った家康も自身で傷付いているし、信長も瞳に涙を浮かべる。ちゃんと双方が15歳な演技が素晴らしい。

 

「今は言えぬ」

クローンであること、18歳まで生きられないこと。信長は知ってるけど、言えないよね……

 

「信長の母です」

自分たちがクローンであることを知ってることを言ったことでショックを受けたみやびの顔を見て、お母さんに相談したんだろうか。だから説明しに来てくれたのかな。

 

「愛を持って育てれば人は変わる」

「俺が手を伸ばせば誰かが死ぬ」

「手は誰かに暴力を振るうためにあるんじゃない。手を取り合い、心を一つにするためにあるの。きっと和の心があなたの人生を豊かにしてくれる」

「その手を」

「その手を」

「前に出して」

「前に出すな!」

「そうすれば、あなたの道に花が咲くのよ」

 

「泣くな、うつけ」

「自分がどこへ向かうのか。そのさだめを確かめてくる」

「俺は、その意味を見つけたいんだ。自分がこの世界に生まれてきたその意味を」

「見届けてくれ」

 

「違う…違うんだ、父さん」

「俺はただ一人の人間として愛してほしかったんだ」

 

舞台を観ているような「手」の対比が素晴らしかった。差し出す手とすがりつく手。温かい陽だまりのような手と氷のように全てを拒絶する手。

家康の手は誤解なので、最終回はきちんと博士に愛されてたのが分かると良いな。

 

 

「家康、すまない」

家康が憎くて戦う訳ではない。

この廉くんの表情が絶妙で震える。

 

 

「俺は、徳川家康だ!」
「我が名は、織田信長!」

「さだめ」は家康と信長とでは違う。

家康は逃れられない「運命」であり、

信長は立ち向かうべき「宿命」。

家康は自らの「運命」に慄いているけど、信長は逃げずに自分で「宿命」を選んだ。

この二つを「俺」「我が名」との違いで表した脚本と演技が素晴らしい。

 

「是非に及ばず」

「ここからは貴様の力が必要なのだ」

「ここからは心のままに進め」

信長に手を差し伸べれられ、武田に背中を起こされる家康。

過去は考えても仕方ない。

大事なのは、これから先の未来。

そのためには、今を大切にして、歩くしかない。自分の道を。

TraceTraceの歌詞のように。

 

 

〈今週の戯れ言〉

  • すぐにごちゃごちゃ意見が対立するクラスメート、15歳っぽい。
  • 普段は大人っぽい伊達も上杉も、ちゃんと15歳なんだなと思う。
  • 秘密を抱えることになった黒田。濱田岳さんがキャスティングされた理由がわかった気がする。
  • 家康ってドイツ語でニーチェを読むくらいだから頭脳面も天才のはず。史実の家康は自分で薬の調合をするくらいの薬マニアなので化学にも強いはず。18歳以降も生きられるような薬を作ってほしい。
  • ジョーカー総長。総長って戦国武将の影武者なのかもね。トランプのジョーカーって何にでも化けられるし。他人の名前で他人の人生を生きて殺される影武者。その子孫なのかも。オリジナルに恨みつらみがあって戦国武将を戦わせた?
  • 本多の恋を知ってた徳川四天王。同性だからといって気持ち悪いとかもなく、普通に受け入れる世界。とても良い。男だって乙女で良いよね。

 

「追記」

理事長の欲望のために作り出されたクローン。それでも、いま、ここにいること、集まって仲間になれたことには意味がある。彼らもまた、出会うべくして出会ったのだ。

「新・信長公記」第八話感想考察〜残らない軌跡の果てで

 

金城「ロードレースはチームスポーツだ。個々の力がどれだけ優れていても、絶対に勝てない。チーム全員が支えあわなければ、頂きに登ることはできない」「お前がつらくなったら、オレたちがいる。オレたちがつらそうになったら、お前が全力で助けろ」

映画「弱虫ペダル」より

弱虫ペダル」は2020年8月14日公開の映画。この台詞は自転車部部長の金城くん(竜星涼)が坂道(永瀬廉)に向けて言った言葉。

新・信長公記は俳優永瀬廉のトレース(痕跡)もトレース(なぞる)していると感じさせてくれるドラマ。

 

「新・信長公記~クラスメートは戦国武将〜」その捌「鳴くまで待とう」

脚本:伊達さん 演出:豊島圭介

 

 
「皆………礼を言う」

明智の「わざと皆に考えさせたのでは?」との問いに「俺は皆を頼りたいだけだ」と言う信長。優しいのも本当だろうけど。

みんなに向かって言うなんでもないセリフだけど、言い方、間が絶妙すぎる。

「皆の心に……留めてほしいことがある」

「全員で……手を取り合え!」

「誰かの危機は誰かが手を差し伸べる」 

「みな、決して一人ではない」

(竹中と黒田の肩に手をやる信長)

「そして、力は、相手をくじくために使うのではなく、自分と味方を守るために戦え」

「よいか、貴様ら。必ず全員で、この教室に帰ってくる」

「出陣だ」

ここも凄すぎる。廉くん、こんな声の出し方ができるようにいつなってたんだろう。恐怖でも力でもなく、「言葉」で皆をまとめていく信長。

裏切り者だった黒田と竹中が両脇にいるのも「一人ではない」のタイミングで肩に手をやるのも唸るくらいの説得力。

「自分」と「味方」と言うのが実に信長らしい。自分を大事にできなければ、相手も大事にできないのが分かっているんだろう。(廉くんもそうだよね)

 

 

「敵に塩を送る」

海を持たない武田領。北条などに塩を止められたのを聞いた謙信は『私は弓矢で戦うことこそ本分だと思うので、塩留めには参加しない。だから、いくらでも越後から輸入するといい。決して高値にしないよう商人にも厳命しておく』と手紙を送ったという。無償で渡すでもなく、暴利を貪るでもない。義の武将、謙信を物語る。

 

 

「変えられる」

「さだめからは逃れられない」

「それが運命か否かは、そんなの結局は後付けの話」

「信長くんたちは今、自分の意思でこうどうしています」

「自らの力で団結し、味方を信じ、知恵を出し、戦っている。正しいと思ったことをつらぬいて」

「足はまだ痛みますか?その傷は、自らの戦い方を選んだ武田くんの意思そのもの」

「道も行末もいくらでも変えられるのではないでしょうか」

「さだめなど天気予報のようなものです。雨だと言われていても晴れることもありますから」

新・信長公記のテーマのひとつが「ひとは変れる」だけど、無理やり変えるようなことは全くしないのが推せる。それぞれが自分の意思で考えて、納得して自分の道を進んでいく。

知ってか知らずか、みやびはみやびなりの戦い方で戦っている。

 

 

「花も実もある」

「花も実も兼ね備えたような勇敢な男だな、貴様は」

1570年「姉川の戦い」で織田・徳川連合軍は、浅井長政朝倉義景の連合軍と激突する。撤退寸前まで追い込まれ敗戦の色が濃く絶望的な状況を打開するため、本多忠勝が単騎で朝倉軍の正面から突入。これを見た徳川軍が、本多忠勝を討たせてはならないと奮起、榊原康政らが側面から突撃を行ない、朝倉軍の陣形を崩すことに成功。

この戦で多大な貢献を果たした本多忠勝を、織田信長は「花も実もある武将だ」(外見ばかりでなく、中身も充実している)として褒めた史実に基づく。

……忠義、カッコ良いよ。

 

「居場所」

「お前、信長がどんな思いでこの策立てたか分かってんのか?」

「お前がひとりじゃないと伝えたくて、お前が加わって初めて成立する作戦作ったんやろが!」

「立て!家康!最後の一手は、お前や」

家康の居場所を無くして絶望させようとする博士の息子。その居場所を作るために、家康自らが変わることを信じる信長。家康と信長を信じて、弱々コンビなのに敵の本陣に入る秀吉と龍造寺。家康のプライドを守るため。運命に逆らえることを示すために。

 

自らをがんじがらめにしていた思考の象徴でもある鎖を自分の力で引きちぎる。

博士の息子に「お前は悪くない」と穏やかに伝え、逃がす家康に以前の面影はない。

家康も変わったのだ。

 

ペリーもジャンヌも始皇帝も無駄な戦いはしない。何のために力をつけるのか、何のために戦うのか、分かったから。

 

もう家康が横暴に振る舞うこともないだろう。

それなのに、旗印を家康に掲げると言う信長。穏やかな表情で受け止める家康。

旗印戦に勝ったら、総長に挑戦する権利が与えられるからか。

一話の最後の遺影は何を意味するのか。

 

 

遺影だけにイエーイなのかな……やりそう。

 

King & Prince「TraceTrace」考察

 

話したいことがあったんだった

僕らがいるこの今日に 何を思っていただろう

ただ描きたい絵があったんだった

誰かをなぞる筆で何を描けただろうか

 

覚める いつか

Cannot be somebody

So I just undertake

 

言える想いの全てが嘘だって言うならさ

ただぶつかって伝えようぜ

君の歩幅で歩けるならさ 嘘だっていいから

 

Give me another name

Then I just undertake

 

いつか思い出して ここにいたことを

一切を込めてなぞっていくだけ

未来忘れて分からなくなったんだ

はみ出して 交わって 重なって

描いたはず 今日のストーリー

 

僕は今ここ 足跡のない場所

ここにある歴史刻み込むように

また今を思い描いて 自由に

僕ら今ここ 足音残して行こう

君の絵に愛を せめて今だけ

 

 

話したいことがあったんだった

過去を辿った今で 何が未来にあるだろう

分からないことがあったんだった

何かをなぞる筆でこの今日をなぞれるだろうか

 

覚める いつか

Cannot be somebody

So I just undertake

 

見える望みの全てが嘘だって言うならさ

またこうやって伝えようぜ

君の言葉で語れるならさ(教えて) 嘘だっていいから

 

Give me another name

Then I just undertake

 

いつか忘れてもいい ここにいないことを

君が一人でも歩けるだけ

未来思い出して今分かったんだ

僕がいた 君がいた ここにいた

ただそれだけさ

 

ただそれだけだった

それだけでよかったな

描いたのは今日のストーリー

 

ここが君と僕の境界

どうやっても君が知ることのない将来

残らない軌跡の果てで ペン先突いて高く鳴らそうな

朝に触れた手に重ねて

なぐり描きした白昼夢

全て焼く夕景

夜を越えてまた明日で会おう

 

いつか思い出して ここにいたことを

一切を込めてなぞっていくだけ

未来忘れて分からなくなったんだ

はみ出して 交わって 重なって

描いたはず 今日のストーリー

 

僕は今ここ 足跡のない場所

ここにある歴史刻み込むように

また今を思い描いて 自由に

僕ら今ここ 足音残して行こう

君の絵に愛を せめて今だけ

 

話したいことがあったんだった

僕らがいるこの今日に 何を思っていただろう

 

「TraceTrace」

歌:King & Prince

作詞:伊根 作曲:伊根

(新・信長公記~クラスメイトは戦国武将~ 主題歌)

2022年9月14日発売King & Prince 10枚目のシングル「TraceTrace」は不思議な世界観の曲。とらえどころのない歌詞には少なくとも三つの意味がある。

 

 

①「アンドロイドと人間」

作詞作曲の伊根さんはAdoなどにも曲を提供しているボカロP。ボカロではよくあるテーマらしい。永遠の生を生きるアンドロイドと有限の生命しかない人間。

MVの世界観もこれに通じるような。

 

アンドロイドは感情を持たない。感情に見えるのはプログラムであり、例えば恋なんてものはバグでしかない。それでも「君」「始まって交わって重なって」感情が芽生え、人として個性が出る服だったり世界が色づいて見える。

ただ、それでも「君」「僕」の間には時間の流れ方も違う。未来のストーリーを知っているアンドロイドだからこその悲しみを「僕と君の境界」と一線を引く。冷たいようで、それは「僕」の優しさでもある。時計も半分壊れ、人間がいなくなったボタニカルな世界で「君」の想い出を「ペン先ついて高く鳴らそうな」というアンドロイド。ペン先から飛び出したインクは単色かカラフルな色か。

 

もうひとつの可能性はアンドロイドがリユースされていること。リセットされて記憶を失ったはずが、「君」と出会うことが、残っているはずのない記憶を掘り起こす。だが、先のプログラムまでは分からない。過去も未来もなく、ただ今日の日を一緒にいたい。できれば「夜を超えてまた明日で会おう」

 

 

②「アイドル King & Prince」

アイドルは永遠ではない。SMAPや嵐の活動休止などで実感した人も多かったはず。MVの中で彼らは年を取らないし、映像もインタビューも歌も永遠に残り続ける。※1 

記念すべき10枚目のシングルということで、MVにも過去の作品をトレースしているのがうかがえる。

 

「誰かをなぞる筆で 何を描けただろうか」自分たちのオリジナルを出そうともがくけれど、それは先輩方の描いてくれた道かもしれない。それでも「描きたい絵」を描くしかない。他の誰も描けないのだから。

 

いろいろな噂や憶測が飛び交う世界で「見える世界の全てが嘘だって言うなら」「ただぶつかって伝えようぜ」と言ってくれるアイドル、King & Prince。

 

「どうやっても君が知ることのない将来」

ドラマも映画もバラエティーもMVも、基本的にはファンが見るのは彼らの「過去」でしかない。そこに至るには無限の努力があるのに。彼らは常に「未来」を生きている。

 

ファンもライフステージが変わったり、他に目映りしたりする。それは仕方ない。

いつか永瀬廉くんがそんなことを言っていたことを思い出す。

「いつか忘れてもいい ここにいないことを 君が一人でも歩けるだけ」

「僕がいた 君がいた ここにいた ただそれだけさ」

 

 

心配しなくても良いよ。

唯一無二のアイドルだよ。

 

 

③「クローンとしての運命」

「TraceTrace」は「新・信長公記」の主題歌。8話終了時点で家康(信長も知ってる?)以外の武将は自分が戦国武将のクローンであることを知らない。衝撃の事実を知ったとき、彼らはどうするのか。

 

「話したいことがあったんだった」

クローン武将は全員15歳。思春期真っ只中。クローンでなくても自分のアイデンティティーも模索する日々だろう。あまりにもつらい現実。

 

「Cannot be somebody So I just undertake(他の誰かになれないだろうか。それなら引き受けるだけ)

「Give me another name Then I just undertake(俺に他の名前をくれ。そしたら引き受けるよ)

何度も繰り返される英語詞。「織田信長」で無かったら、普通の15歳だったら、そっちを選びたい。誰かのコピーではない人生を送りたい。自分の道は自分で決めたい。そう思うのはごく自然なことだろう。

 

「君の言葉で語れるなら(教えて) 嘘だって良いから」

歴史は勝者に都合よく語られることが多い。それでも良い。信じるだけだから。信長らしい言葉。

 

④「未来忘れて 分からなくなったんだ」

アンドロイドでもアイドルでもクローンでも、この曲で共通する点がひとつある。それは、「未来」がわからない、という点だ。

歩くべき道が分からなくて途方にくれる「僕」※2 だけど、逆に言えば、「また、今を思い描いて、自由に」と、自分自身で考えて前に進むことができるということ。今までの足跡は見えなくなってしまっても、これから先の足跡は付けることができる。

 

タワレコの記念レシートには「現在(いま)を積み重ねて 精一杯生きていこう 20180523→→→」というメンバーの言葉が載っている。

 

デビューから4年、10作目の記念すべきシングルとして最高だよ。

 

https://youtu.be/YMErhJXZhp0

 

 

※1)いつまでも残るものだから若い時にしか着れない衣装を着たほうが良いと個人的には思うよ。

※2)ジャニーさんの手の平の上で踊らされてた頃はある意味、楽だったのかもね。

 

 

 

 

 

 

 

「新・信長公記」第七話感想〜未来忘れて分からなくなったんだ〜

 

鳳「困ったことがあれば、目を閉じて深呼吸をいたしましょう。身体の中心にふんわりとした"輪"を描くのです。自分を大きく見せようとせず、小さく萎縮せず。媚びて自らを変えず。強いて相手を変えることを願わず。人もものも空間も、花穎様の陣地に招き入れてやれば良いのです」

花穎「僕は誰も手放さない。

僕の"輪"の中には、赤目さんもいるよ」

映画『うちの執事が言うことには』より

『うちの執事が言うことには』は2019年公開の永瀬廉くんの初主演映画。鳳さんは花穎を育ててくれた執事。神宮寺くんが演じた赤目さんと花穎との経緯はぜひ映画を見てほしい。アマプラにあります。

モネ以降、廉くんを知ってくれた人は演技力の成長にびっくりすると思うよ。

 

Amazon.co.jp: うちの執事が言うことにはを観る | Prime Video

 

「新・信長公記〜クラスメートは戦国武将」その漆 「案ずるな、多少は急ぐ」

脚本:伊達さん 演出:日高貴士

 

 

明智「僕は弱いから、一緒になって本気で悩んでくれる彼らがいないとダメだったんだ」

自分の弱さを知ることは、きっと自分の強さを知ること。

 

黒田「だからこそ案じているのだ。傷はつけられた者よりも、つけた者の記憶に深く残る」

黒田「時は前にしか進まぬ」

竹中に言ってる言葉だけど、家康にも掛かってる気がする。家康の親(博士)殺しの十字架は余りにも重い………

 

みやび「あなたたち(今川と真田)が今するべきことはなんですか」「見失ったならまた探せば良いではないですか」

みやびちゃんの誰に対しても変わらない態度は良いところだと思う。

 

伊達「強さは誰かを守るためにある」 

説得力のある演技力。三浦さんも欠かせない人だよね。お忙しそうで別撮り多いけど。

 

上杉「お前(武田)の戦いは決して無駄にはなってない」「お前の作った石垣はそう簡単には壊れないよ」

単に慰めじゃなくて、本気でそう思っているのが伝わる。石垣は塀じゃなくて城の土台だから。特進クラスの団結力を固めた一因は間違いなく武田の戦いだよ。

 

信長「俺はこれまでずっと答えを探してきた。自分が何をすべきかを。すべての答えが見つかった訳ではない。だが、あいつらと出会い、少しずつだが見えてきた」

信長「家康、貴様が歩むべき道があるなら止めはせん。だがその道はこれからもひとりで歩まねばならんのか」

自分を大きく見せようとせず、卑下もしない信長。信長自身も変わったんだよね。

家康の道も尊重するところが信長の良いところ。

 

信長「つれないことを言うな。同い年ではないか」

一番ぐっときたセリフ。ゴミだのなんだの言ってる相手に対等であることをこんなセリフで言うなんて。

 

理事長「過去の過ちを十字架として背負い、おまえはおまえ自身の力で道を切り開いてきた。だが、おまえが作ったと思っているその道が本当は誰かに作られた道だとしたら…どうする(家康)?」

………何を見せたのか分からないけど、もともとクローンであることを知ってる家康があそこまで無気力になるのはなんだろう……

歴史通りにやっていれば大丈夫だと思っていたのかな。未来、見えなくなったのかな。

 

息子「お前は悪魔。その進む道は悪の道だ」

父親(博士)にバケモノと言われ、その息子に悪魔とまで言われる家康………

育ての母に愛情持って育てられた信長との対比だろうけど、悲しすぎる。

 

武田「お前らしい城で良いんだ、大将」

何気に信長のことをよく見ている武田。迷っているのもお見通し。

 

信長「雲はいつものろのろと動く」

みやび「それでも進んでいます。周りの雲とつながって少しずつ大きくなる。信長くんなら、きっとそんな大将になれると私は思います」

初回からずっと雲を見ている信長。

「道」「ゴミ」に象徴されるように、下を見ている家康との対比だよね。

脚本も演出も凄い。

 

 

考察する時間が無くて、気になったセリフを引用しただけで申し訳ないです。

良い言葉が多いよね。しんしん。ほんとこどもたちに見てほしいドラマだよ。

 

 

冒頭の花穎は「輪」の中を大事にしようとするけれど、信長は更に一歩進んで「和」の心で敵でさえも包み込んでいく。もちろん、家康の進む道も尊重した上で。

花穎は「当主」になるべく成長する物語。

信長のめざす「大将」はなんだろうね。ついていきたいな。

 

〈今週の戯れ言〉

  • 敵のアジトが教会、始皇帝が家康を倒したのが神社の境内。復讐もバチも人間が人間に与えるものではない気がする。神様の領域じゃない?
  • そもそもクローン人間も神の領域を冒涜してるよね。それも自分の楽しみのためって。
  • 家康が読んでいた「ツァラトゥストラかく語りき」はここに繋がるのかな。「神は死んだ」って言葉が出てくるけど。
  • クローン出生にみやびのお父さん、関わっていそう。歴史学者だから。
  • あんなに怯えていたのに勇気を出して家康に直談判しにいった明智、凄いね。偉いよ。
  • 上杉と伊達の友情はエモい。エモすぎる。
  • 黒田官兵衛竹中半兵衛もエモい。
  • しんしんの癒やし枠。本多と秀吉。(百年後の未来の価値観はどうか分からないけど)あまり偏見のなさそうな秀吉が相手でほっとした。応援してくれそう。みやび担だけに。
  • だがしかし、「多少は急ぐ」って視聴者は知ってるけど、作中ではみやびだけが分かってる言葉だよ。そんなこと言われて落ちない女子いる?
  • 百年先もリア恋発揮する永瀬廉。