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ぼくはまた君に恋するんだろう

映画『弱虫ペダル』感想〈前編〉~誰にだって輝ける場所がある~

配信でもテレビでも見ることができる時代だからこそ、劇場で見たい映画がある。

映画『弱虫ペダル』は、そんな作品のひとつだ。

 

CGを使わずに俳優たちが実際に自転車を漕いでいるからこその説得力。迫力。

 

自転車の速度に合わせて流れる景色。

軋むタイヤの音。空気をつんざくブレーキ音。ギヤの変換音。

風切る音。

選手の息遣い。苦しそうな表情。

集団で自転車を走らせる迫力。

遥か遠くに見える山頂。

山頂から見た広大な景色。

 

新生活を応援するような桜の花。

初めてできた友達と一緒に走る夕焼けの空。

悔しさを包みこむような夕暮れの海。

 

あの大きなスクリーンだからこそ、響くものがあるんじゃないかと思える。

 

4DXじゃないのに、その場所の風も、自転車の振動も伝わってくるようで。

 

 

あまりマンガを読まない私でも知ってる作品。この作品きっかけでロードバイクを始めた人も近くにいたり。「ぼくらはマンガで強くなった」で渡辺先生と新城選手の対談番組を見ていたり。アニメも途中まで見ていたし。

そんな大きすぎる作品の実写化。不安しかなかった。

もういわゆるブームが落ち着いた今というのも。

 

発表になってからすぐにドラマ版の事故のことを知ったり。コロナの影響でエキストラさんの集まりが悪いのかも心配で。緊急事態宣言が出て、ドラマも映画も撮影が中止になっていたけど、クランクアップの声は聞こえてこない。色々な作品が公開延期になっていく中で本当に予定通りに公開できるのか。等々。

 

そんな不安を一掃してくれた実写化だった。

 

永瀬廉がKing & Princeとしてデビューして世に出るのを待ってたのかとすら思えるキャスティング。他の総北メンバーもぴったりで。マンガ的な表現も三次元に落としこむとこうなるんだという無理ない範囲での再現。

 

もちろん、原作を読んだことない、アニメを見たことのない人にも、映画そのものだけで楽しめる作品。

 

「アイドル映画」だと思って敬遠してる人にこそ見てもらいたい。

 

難しいことはともかく、見終わったら、自転車って良いな。友達って良いな。涼しくなったら、ママチャリに乗ってみようかな。そんな風に思える良作だと思う。

 


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(追記※ネタばれあります)

みんな言ってるけど、やっぱり脚本が良いよね。原作69巻もある膨大な作品から、どこをカットするか、どこをクローズアップするか。練りに練られた脚本だと思う。ハイケイデンスだったり、ママチャリで鼻歌歌いながらの激坂登りだったり、エースらしく見える自転車の乗り方だったり、キャストはその分大変だっただろうけど。

「原作ファン、アニメファン、自転車乗りが見ても恥ずかしくない作品ですよ」という製作側の自信をすごく感じる。

三年生が共闘に巻き込まれても動かないのは県大会で勝つのが目的じゃなくて、全国大会優勝が目標だからなんじゃないかと個人的には思った。全員がそのレベルにならないと王者箱学には勝てないもんね。

続編があると良いな。